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【内田雅也の追球】大量点呼んだ岡田彰布流の積極的「待球」 「なんでやねん」から1年でしっかり浸透

2023年09月03日 08:00

野球

【内田雅也の追球】大量点呼んだ岡田彰布流の積極的「待球」 「なんでやねん」から1年でしっかり浸透
<ヤ・神>3回、四球を選んだ中野(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神6-5ヤクルト ( 2023年9月2日    神宮 )】 阪神の大量6点を呼んだのは1、2番打者の「待球」である。
 2点を追う3回表だった。2死二塁、近本光司はカウント2ボール―1ストライクから外角高めカッターを見送った。見た目で書けば、打ちにいこうとして途中でやめた感じだった。2―2と追い込まれたが、スライダーをしぶとく右前に落とす適時打を放った。

 続く2死一塁での中野拓夢もカウント2―0から、さらに3―1からの内角直球を見送った。結果フルカウントから四球でつないでいる。

 この後、小野寺暖の幸運な2点三塁打が出て逆転。大山悠輔がまたも四球でつなぎ、佐藤輝明3ランとたたみかけた。

 試合後、監督・岡田彰布は「いつもだけど、四球がからんでのビッグイニングやったな」と話した。今季、得意とする四球絡みの得点である。

 今季、四球が激増した阪神にあって、中野はその象徴的な打者だ。昨季の四球はわずか18個だった。今季、その数字には早々5月に到達し、この夜で51個となった。

 評論家だった岡田が中野の打撃姿勢に疑問を呈したのを覚えている。昨年9月20日のDeNA戦(甲子園)。同点の3回裏無死一塁、3―1から二ゴロ併殺打に倒れた。この時、岡田は「なんでやねん!?」とぼやいた。「3―1は打者チャンスのカウントやない。3―2でも投手の苦しさは変わらない。打者が分からんのならベンチは“待て”を出すべきや」。あれから1年、中野は自発的に、積極的に待った。

 待球で言えば、もう一つ。4回表2死無走者、近本は2ストライクまで打ちにいかず、見送っていた。直前に投手の青柳晃洋が右飛に凡退。ベンチで準備する時間を稼いでいたのだろう。

 近本は以前、投手凡退直後の打席で初球を打って凡退したことがあった。この時も岡田の「なんでやねん!?」を聞いた。

 こんな待球姿勢を見るだけでも、岡田の考えが確実に、チームに浸透しているのが分かる。

 追加点が奪えず、最後は1点差まで迫られた。それがどうした。もう9月ではないか。課題や反省など言っている時期ではない。内容より結果。勝てばいいのである。

 きょう3日は1986年、55歳で逝った岡田の父・勇郎の命日である。天国から頼もしく見つめている。もう父親の年齢を大きく超えた息子が「勝負の9月」を戦っていた。  =敬称略=
 (編集委員)

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