阪神・糸原が貫く「準備」の日々…「きついわ」同僚にバーで漏らした代打稼業の過酷さ

2023年11月02日 06:15

野球

阪神・糸原が貫く「準備」の日々…「きついわ」同僚にバーで漏らした代打稼業の過酷さ
日本シリーズ<神・オ>8回、安達の三ゴロをバックホームする糸原(撮影・島崎 忠彦) Photo By スポニチ
 【SMBC日本シリーズ2023第4戦   阪神4―3オリックス ( 2023年11月1日    甲子園 )】 阪神・糸原は、激闘の試合後「準備」という言葉に何度も力を込めた。
 「日頃から準備はしてるので。緊張はしましたけど」

 今季、代打の切り札としてベンチに待機する男が急遽、三塁グラブを準備してグラウンドへ飛び出したのは7回だった。2点リードのこの回、先頭・広岡の三ゴロを佐藤輝が後逸する失策。打撃でも3三振の大砲は明らかに精彩を欠いていた。2番手の桐敷が同点に追いつかれ、なお1死一、二塁のピンチを背負ったところで岡田監督は9番から始まる7回の攻撃も見据えて投手桐敷と三塁・佐藤輝をダブルスイッチ。6番・投手に石井、9番・三塁に糸原が入った。実に7月12日以来となる三塁守備。8回1死一、三塁では安達の三ゴロを冷静に処理して本塁送球でアウトに。バットでも1安打と攻守で意地を見せた。

 「準備」というフレーズは、背番号33の1日をそのまま表す。ホームゲームではプレーボールの8時間以上前に自宅を出発。馴染みの定食屋で好物のカツ丼を午前10時台にかき込んで甲子園球場に向かう日も多かった。ビジターでは、前日がナイターだったとしても早朝から始動。ウエートトレーニングで汗を流した後、宿舎周辺でランチをする時間が束の間の休息だった。「時間がもったいない。ウエートしたいっす」の口癖は本音だろう。

 二塁、三塁のレギュラー格だった昨年までもほぼ同じルーティンを遂行してきたが、代打稼業に専念した今年は、気構えがより強くなった。「1球でその日の打席が終わることだってある。準備だけは怠りたくない」。オープン戦から開幕直後は、巡ってきたとしても1日1打席しかない“新天地”に苦しんだ。「代打は本当に難しい。きついわ…」。東京遠征中のある夜、小さなバーで同い歳の谷川打撃投手にそう漏らしたこともあった。

 試合後、ユニホームからは土の香りがした。「めちゃくちゃ良い勝ち方ができたと思うんで、明日が大事」。久々にグラウンドで味わった「攻守」の充実感に少しだけ浸り、糸原はきょうも「準備」から1日をスタートさせる。 (遠藤 礼)

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