有藤通世氏 阪神・ノイジーの千金弾生んだ「内角」と「低め」の意識 第2戦と2球目のイメージ残った

2023年11月06日 05:30

野球

有藤通世氏 阪神・ノイジーの千金弾生んだ「内角」と「低め」の意識 第2戦と2球目のイメージ残った
<オ・神>4回、先制弾を放ったノイジー(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【SMBC日本シリーズ2023第7戦   阪神7-1オリックス ( 2023年11月5日    京セラD )】 【有藤通世 日本シリーズ大分析】3勝3敗で雌雄を決する第7戦は、阪神打線が第2戦で抑え込まれたオリックス先発・宮城を見事に攻略した。勝負を分けたのは、4回にノイジーが放った先制3ラン。スポニチ本紙評論家の有藤通世氏(76)は内角低めのチェンジアップを打った要因を分析し、低めと落ちる球への意識が技ありの一発を生んだと指摘した。
 見逃せばボール球だったろう。4回1死一、二塁でのノイジーの先制3ラン。膝元の低めのチェンジアップを見事に打ち返したが、直球を待っていては絶対に打てない球種、コースだ。さまざまな伏線が絡んでの一発。宮城は打者としてのノイジーの執念に負けたと言っていい。

 「内角」と「低め」への意識。この2つが助っ人の頭にはあったはずだ。まずは「内角」。この打席は直球を2球続けられてカウント0―2と追い込まれた。特に2球目は内角へのクロスファイア。厳しいコースで、ノイジーはストライクの判定に首を振っていた。この一球が脳裏に残る。最後のチェンジアップは捕手の森は外角に構えていたが、魅入られたように内角に変化してしまった。

 もう一つが「低め」。ノイジーは0―8で敗れた第2戦、4回2死一、二塁で宮城のフォークに空振り三振を喫していた。追い込まれれば、低めの落ちる球が来る。前回対戦のイメージが強く残っていたからこその快打。続く5回の適時打など中堅に素直に打ち返す打撃もできるし、非常にスマートな打者だ。

 3回まで0―0。静かな序盤だっただけに、どちらが先制点を取るかが焦点だった。それが1点ではなく、一挙に3点。阪神は一気に流れを手にした。

 ≪「勢い」呼んだ開幕投手・青柳の起用≫私が監督なら起用をためらったかもしれない。大一番の第7戦。岡田監督は青柳を先発マウンドに送った。昨季まで2年連続最多勝の右腕は、今季は8勝止まりで防御率4.57。それでも先発を決断したのは、功労者の梅野をベンチに入れたのと同様に、岡田流の親心もあっただろう。

 阪神の今季開幕戦は3月31日のDeNA戦。球場はこの日と同じ京セラドームで開幕投手は青柳だった。シーズン最後の試合を、苦しい一年を送った青柳で締めたい。人情派と思える一方、冷静な計算も見え隠れする。第4戦でぶっつけ本番で起用した中継ぎ右腕の湯浅と同様に、青柳起用はナインの気持ちを高ぶらせ、ファンを巻き込んだ「勢い」を生み出せるはずだ、と。

 青柳も期待に応え、一球一球を非常に丁寧に投げた。初回1死一塁では、好調の紅林を内角ボールゾーンからストライクになるフロントドアのスライダーで見逃し三振。想定外のボールで仕留めて波に乗った。横手の変則投手はパ・リーグに少ない。そんな利点も生かした好投だった。

 ▽青柳の今季開幕投手 3月31日のDeNA戦(京セラドーム)で自身初の開幕投手を務め、4回まで完全投球。6回2死一、三塁で降板したものの、5回2/3を2安打1失点で今季初勝利を挙げた。球団の日本人投手では11年の能見篤史以来12年ぶりとなる開幕戦勝利となり、15年ぶりに復帰した岡田監督に白星を贈った。

 ≪第4戦 山崎福の投手への四球がターニングポイント≫1964年以来の関西決戦は大いに盛り上がった。阪神は59年前、3勝2敗と先に王手をかけながら南海に連敗。今回も3勝2敗からタイに追いつかれたが、前回のように連敗はせず栄冠に輝いた。絶対に日本一になる。そんな強い思いが結実したのだと思う。

 オリックスは、特に甲子園での試合でシーズン中には少なかった守りのミスが目立った。私が思うターニングポイントは第4戦の2回、先発・山崎福が2死一塁で投手の才木に与えた四球。ここで勝ち越され、最後はサヨナラ負けを喫した。杉本ら故障者が万全な状態での戦いも見てみたかった。

 お互いが意地をぶつけ合った7試合。岡田監督は流れをオリックスに渡さない、信念に基づいた選手起用が非常に光ったと思う。

おすすめテーマ

2023年11月06日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム