ロッテ場内アナウンスを卒業した谷保さん 最後の打席をアナウンスした「3冠王」を尊敬するその背景には…

2023年12月22日 12:45

野球

ロッテ場内アナウンスを卒業した谷保さん 最後の打席をアナウンスした「3冠王」を尊敬するその背景には…
98年、谷保さんがアナウンスした日本ハム・落合氏の現役最後の打席 Photo By スポニチ
 帯広出身の谷保恵美さんは、今季限りでロッテで場内アナウンス生活を卒業した。公式戦2100試合を担当する中で、数々のシーンと出合った。故郷・北海道で初めてアナウンスした釧路での記憶、日本ハムで現役引退した3冠王との思い出も語ってくれた。
 33年のアナウンス歴を誇る谷保さんでも、故郷・北海道で仕事する機会はほとんどなかった。

 「札幌ドームでアナウンスしたことはないですね。完成したときに見に行きました。エスコンはまだ行ってない。来年が楽しみなんですよ。帯広三条の友達と見に行こうと思っています」

 今年開業した日本ハム本拠地での観戦を心待ちにする。「これからはスタンドで試合を見ながら、“何やってんだよ”とガンガン言いますよ。昭和の人間なので、SNSでなくスタンドからね。フフフッ」と不敵な笑みを浮かべる。

 仕事で初めて北海道を訪れたのは、91年秋。「釧路で(マリーンズの前身)オリオンズの最後の年に試合があったんですよ。会社には新人なのに“北海道出身だから、それまでに練習して釧路に行ってこい”と言ってくれて、初めて一人で行きました」。2軍でアナウンスの実戦練習を積み、夏から川崎球場で1軍に付いて勉強しながら準備した。

 91年9月7日。釧路はあいにくの天気だったが、金田正一監督の大胆な行動が、谷保さんの脳裏に焼き付く。「“中止じゃない”って言われていたのに、金田さんが“どうしても前田さんを先発させたい”とグラウンドにガソリンをまいて、火を付けて、乾かして、試合をやりました」。この試合、前田幸長は日本ハムに1失点完投で勝利した。

 日本ハム戦で、忘れられない記憶はさらにある。98年10月7日、史上最多3度の3冠王に輝いた落合博満の現役最後の打席だ。結果は代打で一ゴロ。「最後の打席をアナウンスできるなんて、光栄だなと凄く印象に残っている。マリンで姿を見られて、凄く感動した」と懐かしんだ。

 ロッテOBの落合氏とは、会話したことがない。「私が入ったときは、もういなかったので、お話ししたことはないです。(選手とも)意外と線を引いている。リスペクトしているので、そんなに近づいてはいけないと…」と独自ルールを持つ。

 意外な事実もある。「実家がお菓子屋なので、落合さんが3冠王獲った時に、“3冠王 落合”と書いてあるバットをロッテからもらったんです。私はそれでずっと素振りをしていたんです。今も、うちにあるんです」。後日、スマートフォンに谷保さんから送られてきた写真には、年季の入ったバットが写っていた。(横市 勇)

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