【内田雅也の追球】「短命」球団社長の危惧

2023年12月22日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「短命」球団社長の危惧
花とマイクがセットされた記者会見の席 Photo By スポニチ
 阪神球団社長交代の会見がある甲子園の球団事務所プレスルームに早く着いた。配線など準備中のテレビ局スタッフ以外は誰もいなかった。
 会見の席にはマイクと花がセットされていた。新しい球団社長就任を祝う花である。おめでたい席で、冷や水をかけるつもりなどない。

 ただ、同じように花が添えられた新社長就任の席をここ何年、何度も見てきたように思った。調べてみると2015年11月から正味9年間で6人目の球団社長だった。

 9年間務めた南信男から四藤慶一郎(足かけ2年)、揚塩健治(同4年)、藤原崇起(同2年)、現社長の百北幸司(同2年)、そして元日付就任の粟井一夫である。

 それぞれ交代には理由があろう。揚塩はコロナ禍で選手に感染者が幾度も出たことに関する管理責任を問われた。藤原はオーナーが球団社長を兼務するという臨時措置だった。今回の交代について退任する百北は「日本一にはなったが、フロントも成長していかなければならない。グループ一の知見を持つ粟井社長に託したい」と話した。わかったようで、よくわからない説明だった。

 球団社長が9年で6人目の間、監督は和田豊、金本知憲、矢野燿大、岡田彰布の4人。かつて阪神は監督の在任期間が短いとよく指摘された。創立88年で今の岡田が35代目、平均寿命は2年6カ月である。不成績など問題が起きれば監督の首のすげ替えで事を処理しているとの批判があった。

 一方、球団社長は粟井で18人目だが、近年は監督より寿命が短い。こんな短命社長で大丈夫なのかと心配になる。球団社長の存在があまりに軽くなりすぎてはいないか。

 かつて、19年にわたり務めた戸沢一隆は田宮謙次郎と一升瓶を空けた。「ブルドーザー」と呼ばれ改革を推し進めた小津正次郎など名物社長がいた。監督や選手との関係も近かった。時代が異なるとはいえ、頻繁な社長交代で監督や現場と意思疎通が計れるだろうか。

 大谷翔平がドジャースと契約を結んだ際、オーナーか球団社長がいなくなった場合、契約を破棄できるという条項があったそうだ。球団社長との信頼関係を垣間見る。

 粟井は「岡田監督とも今まで以上にコミュニケーションをとっていきたい」と話した。期待する一方、先に心配を書いておいた。 =敬称略= (編集委員)

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