泉谷 パリ五輪へ課題と収穫 110メートル障害で日本勢初の5位入賞

2023年08月23日 04:44

陸上

泉谷 パリ五輪へ課題と収穫 110メートル障害で日本勢初の5位入賞
男子110メートル障害準決勝での泉谷(左、AP) Photo By AP
 【陸上 世界選手権第3日 ( 2023年8月21日    ハンガリー・ブダペスト )】 男子110メートル障害決勝が行われ、日本記録保持者の泉谷駿介(23=住友電工)が13秒19で5位入賞を果たした。準決勝を13秒16の1組1着で突破。五輪を含め同種目の日本勢初となる決勝進出の快挙を成し遂げ、来夏のパリ五輪でのメダル獲得へ収穫と課題を持ち帰った。また、21年東京五輪で泉谷と準決勝に進んだ元日本記録保持者の金井大旺氏(27)が今大会を解説した。
 壁をこじ開けた先に、新たな光景が広がっていた。5位でフィニッシュした泉谷はしゃがみ込み、3連覇した王者ホロウェー(米国)らの歓喜の様子をじっと見つめた。「優勝した人たちが盛り上がっていた。凄いな。来年はそこに立ちたいと思った」。表彰台との差は0秒10。自己ベスト13秒04に近い走りができればメダルに手がかかった。それだけに悔しさが募った。

 1組1着で準決勝を通過し、わずか95分後に訪れた最高峰の舞台。想定外の事態が起こった。号砲と同時にスターティングブロックを蹴った瞬間「両足ふくらはぎをつった。焦りまくった」。腿に貼っていたゼッケンが左手にくっつくハプニングもあった。「ふくらはぎと足首を固める」イメージで力を振り絞り、終盤はハードルにぶつけながら「記憶がない。これ以上つらないように我慢していた」。夢中で駆け抜け「楽しい気持ちでいっぱい」と振り返った。

 一切の甘えを捨て、この舞台に懸けてきた。今季から味の素ナショナルトレーニングセンターを拠点に置く。以前は感覚で跳んでいたハードリングの練習も、自身の靴8足分に当たるハードル手前2メートル20にマーキングを設置。細部にこだわった。栄養バランスの良い昼食を取り、自宅では朝夕に「豚汁を鶏肉に代えた鶏汁」を作って苦手な野菜も食べた。高校時代は混成競技で日本一を誇った才能が、さらに磨かれた。

 心理的な障害も乗り越えた。1メートル75と小柄な泉谷は昨年まで屈強な海外勢を見て萎縮していたが、日本記録を出した6月の日本選手権後は欧州で武者修行を敢行。最高峰のダイヤモンドリーグを2戦転戦し、その会場でライバルたちを見て実感した。「去年よりあまり速くないな。もしかしたら自分の方が速いんじゃないか」。国際舞台の場数を踏み、自信も深めた。

 0秒03差で散った東京五輪、昨年のオレゴン大会の準決勝敗退を経て、三度目の正直でたどり着いた決勝。「メダルは近いようで遠い。トップ選手は本番に強いと改めて感じた」という一方で「自分の力を出し切れれば、もしかしたらあると思っている」と糸口も見えた。確かな収穫を胸に、来夏へ再出発する。

 ▽パリ五輪への道 トラック&フィールド種目は既に有効期間に入った五輪参加標準記録突破が(〓/)最初の条件。その上で(1)今大会3位以内の日本人最上位は代表に即決定(2)今大会8位以内入賞者で日本人最上位は、24年1~6月の期間にもう1度参加標準を突破すれば内定(男女5000、1万メートルは23年11月から)。(1)(2)で該当者がいない場合は来年の日本選手権の結果を基に選考する。泉谷は参加標準記録13秒27を突破しており(2)に当たる。

 ◇泉谷 駿介(いずみや しゅんすけ)
 ☆生まれとサイズ 2000年(平12)1月26日生まれ、横浜市出身の23歳。1メートル75、69キロ。

 ☆競技歴 小学校で取り組んだサッカーが好きになれず中学から陸上を始め、当時は主に走り高跳び。武相高で才能が開花し、3年時に八種競技で全国高校総体優勝。三段跳びも3位入賞。順大から110メートル障害に専念。

 ☆万能型 専門の110メートル障害で日本記録の13秒04を持つだけでなく、100メートル10秒37、走り幅跳び8メートル00、三段跳び16メートル08と驚異的なスピードとバネの持ち主。

 ☆泉谷の1ミリ 指導する山崎一彦コーチはハードル間の刻み方を「世界一のインターバル」と表現。スピードを加減する「アクセルワーク」が抜群で、ハードリング技術も「1ミリ単位で調整できると思いますよ!」

 ☆ルーティン 大好きなコーヒーを試合1週間前から抜き、勝負の日の朝に再びチャージ。6月の日本選手権でも同じルーティンで日本記録を樹立し、今大会も準決、決勝の21日にカフェイン注入。

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