納豆の栄養と効果的な食べ方。ダイエットにいい? 食べ過ぎるとどうなる? 高たんぱく食べ合わせも解説【栄養士監修】

2023年11月18日 09:00

納豆の栄養と効果的な食べ方。ダイエットにいい? 食べ過ぎるとどうなる? 高たんぱく食べ合わせも解説【栄養士監修】
「カラダにいい」「健康にいい」「低カロリー」といったイメージの納豆。実際、納豆には5大栄養素のほか食物繊維やナットウキナーゼなど多くの栄養が含まれています。「畑の肉」ともいわれる大豆を発酵して作る納豆は良質なたんぱく質を […]

「カラダにいい」「健康にいい」「低カロリー」といったイメージの納豆。実際、納豆には5大栄養素のほか食物繊維やナットウキナーゼなど多くの栄養が含まれています。「畑の肉」ともいわれる大豆を発酵して作る納豆は良質なたんぱく質を豊富に含み、トレーニーやランナーから支持される「筋肉にいい」食品でもあります。

そこで今回は、納豆に期待できる効果として挙げられる「便秘」「免疫力」「ダイエット」といったキーワードにも迫り、納豆パワーについて掘り下げます。

解説は、 Japanマラソンクラブのマラソンインストラクターでもある管理栄養士の深野裕子さん。納豆についてのさまざまなギモンに答えていただきました。

納豆に含まれるカロリーや栄養素

さて、起源については謎に包まれた(?!)納豆ですが、納豆にはヒトの健康維持のために必要不可欠なたんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルといった5大栄養素がすべて含まれ、第6の栄養素といわれる食物繊維も豊富に含まれています。 

納豆の栄養成分(1パック)

 

糸引き納豆

ひきわり納豆

1食目安

50g

50g

エネルギー(kcal) 

95

93

炭水化物(g)   

6.1

5.3

たんぱく質(g)

8.3

8.3

脂質(g)

5.0

5.0

カルシウム(mg)

45

30

鉄(mg)

1.7

1.3

ビタミンB1(mg)

0.04

0.07

ビタミンB2(mg)

0.28

0.18

ビタミンB6(mg)

0.12

0.14

食物繊維(g)

3.4

3.0

大豆イソフラボン(mg)

37

37

アミノ酸

イソロイシン(mg)

400

410

ロイシン(mg)

650

700

バリン(mg)

430

450

脂肪酸

飽和脂肪酸(g)

1.45

1.45

n-3系脂肪酸(g)

0.67

0.67

n-6系脂肪酸(g)

4.98

4.98

食物繊維

水溶性(g)

1.2

1.0

不溶性(g)

2.2

2.0

※日本食品標準成分表2020年度版(八訂)をもとに作成 ※大豆イソフラボン数値:参考文献『栄養の「こつ」の化学』(柴田書店・佐藤秀美)
※食片成分表2021アミノ酸成分表・脂肪酸成分表・炭水化物成分表をもとに作成

大豆自体も栄養豊富な食品ですが、大豆が発酵して納豆になることで、とくにビタミンB2やビタミンKが多くなります。

発酵過程の納豆菌により、大豆が本来持っている成分に加えて、新たに加わる成分があるのが特徴です。

納豆に期待できる効果とは

便秘やダイエットにいいってホント?

納豆には私たちのカラダにとって大切な栄養がたっぷり含まれていることは分かりましたが、本当に「便秘」や「ダイエット」「免疫力アップ」にも有効なのでしょうか。

ゆでた(蒸した)大豆に納豆菌を加えて発酵させた発酵食品である納豆。この納豆菌は、胃酸に負けることなく、生きたまま腸内にたどり着き、もともといる善玉菌を活性化し、悪玉菌を抑制して腸内環境を改善させる働きが期待できます。

「便秘やダイエットには“腸内環境を整えること”が重要です。私たちの腸には、100~1000兆個(重さにすると約1.5kg!)もの腸内細菌が生息していて、善玉菌・悪玉菌・日和見菌の大きく3つに分けられます。菌の理想バランスは、善玉菌2:悪玉菌1:日和見菌7とされています」(深野さん)

腸内環境

実はこの腸内細菌の種類やバランス、腸内環境が太りやすさや肥満と深く関わっていることが分かっているのだそうです。

太ったマウスの腸内細菌を移植された普通のマウスも太りやすくなるというデータや、肥満の人の腸内フローラ(腸壁に隙間なくびっしりと張り付いた腸内細菌)は多様性が少なく特定の菌種に偏り、瘦せた人の場合は多様性に富むことが報告されているとのこと。

免疫力アップにはどう?

さらに免疫機能の約70%を支えているのも腸といわれ、腸内環境を整える働きがある納豆菌は免疫機能を整えるためにも有効なのだそうです。

「便秘の解消やダイエット、免疫機能を整えるには、腸内環境を整え善玉菌のエサとなる食物繊維やオリゴ糖を摂取し、善玉菌が住みやすい環境を作ることが大切です。その意味で、納豆は便秘やダイエットにも効果が期待できるといえますね」(深野さん)

それでは、ダイエットや便秘解消におすすめのちょい足しレシピとは。

管理栄養士おすすめ! 納豆ちょい足しレシピ

《ダイエット効果がアップする納豆+αの組み合わせ》

納豆×キムチ

納豆×キムチ

「キムチ(発酵したもの)にも、乳酸菌が多く含まれています。腸内の善玉菌を増やし、悪玉菌の増殖を抑制してくれます」(深野さん)

納豆×めかぶ

「めかぶは水溶性食物繊維が豊富に含まれています。腸内の善玉菌のエサをセットでとることでより腸内環境をより効果的に整えることができます」(深野さん)

トレーニー&ランナーにおすすめ! “納豆とのちょっとイイ関係”

それでは、日々、筋肉を育てるために食生活にもこだわるトレーニーやランナー諸氏が今まで以上に納豆とイイ関係を築くにはどうしたらいいでしょうか。

深野さんは「筋トレやランニングなどのトレーニング時はたんぱく質を意識的に摂取することは実践されている方も多いはず」と前置きをしたうえで、納豆がトレーニーやランナーにおすすめの理由を解説してくれました。

「植物性のたんぱく質の代表の大豆食品は必須アミノ酸がバランスよく含まれ、その多さは動物性食品である肉や魚(100g中約20gのたんぱく質)、卵(100g中12.3gのたんぱく質)にも匹敵します。動物性のたんぱく質と植物性のたんぱく質を上手く組み合わせて食事にとり入れるようにするのがおすすめです」(深野さん)

納豆には食事では不足しがちなカルシウムも豊富に含まれ、カルシウムの骨への沈着を促すビタミンは納豆菌によりもとの大豆よりも多く含まれます。ナットウキナーゼは骨形成を促し、ポリグルタミン酸(納豆のネバネバの素)はカルシウムの吸収を促します。

「筋トレやランニングは筋肉だけでなく、骨にも物理的負荷をかけ骨密度が下がることでケガのリスクも高まります。なので、日本人に不足しがちなカルシウムと併せて摂りたいビタミンKやナットウキナーゼ、ポリグルタミン酸をセットで摂れる納豆は積極的に食事に採り入れてほしい食材です」(深野さん)

さらに納豆は鉄の供給源としても優秀とのこと。たんぱく質と鉄は、ヘモグロビンの材料で血液中の酸素を身体の隅々に運ぶために重要で、トレーニングする人は積極的に摂りたい栄養素とも。また、腸内環境を整えるのも筋トレやランニングなどを日常的に行う人には重要ですと、深野さん。

「腸内環境と免疫機能は非常に深い関わりがあり、特に強度の高いトレーニングや長時間にわたる練習に取り組むような人は、免疫機能が低下しやすいことがわかっています。したがって腸内環境を整える納豆を食べることは、体調管理にもつながります」(深野さん)

《トレーニー&ランナーにおすすめの納豆の効果的な食べ方》

納豆たまごかけご飯

納豆たまごかけご飯

「朝食におすすめのメニューです。朝は特にたんぱく質が不足しがちですが朝食でしっかりたんぱく質を摂取している人のほうが、筋肉量の維持・増加に有効である可能性が示されています」(深野さん)

納豆は1日何パックまで?

納豆は1日1パック

便秘にもダイエットにもよく、免疫力アップにも有効で、トレーニーやランナーにもおすすめの納豆。しかし、食べすぎはNGなのだそう。

「1パックで5gの脂質が含まれ、食べ過ぎれば摂取する脂質やエネルギーも増えて太りやすくなってしまいます。納豆のみなど偏った食事は、栄養バランスも偏ってしまいます。1つの食材に偏るような「ばっかり食べ」や「単品食べ」は要注意です。納豆は1日1パックを目安にするとよいでしょう」(深野さん)

さらに、納豆にも多く含まれているオリゴ糖などを多く含む食材を食べると腹部の膨満感や下痢を起こしやすい体質の方は控えたほうがよいこともある、とのこと。何事も過ぎたるは及ばざるが如しです。

賞味期限切れの納豆はどうする?

納豆も腐る! イヤなニオイがしたらNG

最後に「賞味期限の切れた納豆」や「納豆の冷凍保存」についてですが、納豆には独特のニオイがありますが腐っているわけではなく発酵によるもの。発酵と腐敗は違います。

しかし、腐らないわけではありません。納豆菌とは別の有害な菌が付着すれば腐りますし、いつもと違う嫌なニオイがしたら食べない方がいいでしょう。

納豆メーカーのHPには「期限が過ぎると風味が落ちたり臭いが強くなり本来の風味が損なわれるため、賞味期限以降はおすすめできません」と記されていることが多く、やはり賞味期限内に食べることがベストなようです。

また、納豆に適した保存温度は10℃以下。冷凍保存も可能です。パッケージを開けずにそのまま冷凍庫へ入れるか、ニオイが気になる場合は、チャック付きの保存袋に入れて冷凍するといいでしょう。解凍方法は冷蔵庫に移して自然解凍すればOKです。

練り混ぜるほどおいしくなるといわれる納豆。混ぜる回数と栄養素に関係はないようですが、まずは何もかけずに混ぜて、混ぜながらタレを少しずつ加えていくのがよいそうです。

美食家で知られる魯山人は毎回424回も混ぜていたとか。そのハードさ、シビレます。

日本人はいつから納豆を食べていたのか。納豆の起源

日本の伝統食の納豆について詳しくお伝えしてきました。ところで、日本人はいったいいつから納豆を食べていたのでしょう?

あの独特なニオイと糸を引く粘り気。普通に考えたら「腐ってる……」と思ってもおかしくはないですよね。いつ、だれが納豆を最初に食べたのでしょうか。納豆の起源には諸説あります。

納豆の原材料である大豆の栽培が普及した弥生時代、竪穴式住居の床に敷いた稲ワラに落ちた煮豆が自然発酵して納豆になったという「弥生時代説」。

聖徳太子の馬のエサの煮豆が余り、もったいないとワラに包んでおいたら自然発酵して糸を引く豆となっており、食べたらおいしかったので人々に広めたという「聖徳太子説」。

平安時代、源義家が奥州遠征で農民に煮豆を差し出すよう命令した際、急ごしらえで煮豆をよく冷まさずに俵に詰めたため、数日後に納豆になっていたという「源義家説」。

戦国大名・加藤清正が朝鮮出兵の際に煮豆を俵に入れて保存し、しばらくしたらいい匂いがするので開けてみたら納豆になっていたという「加藤清正説」。

ワラに包まれた納豆

これらのどれが本当なのかは実のところ謎なのですが、どの説にも必ず「ワラ」が登場します。原材料の大豆(煮豆)がワラの納豆菌で自然発酵したものであるというのは、納豆の起源に共通する重要なポイント。偶然がもたらした奇跡の出会いだったのです。

果たして、納豆を広く庶民が食べるようになったのは江戸時代から。江戸の人々は「ナットナットナット~」と売り歩く納豆売りから納豆を買い、「白飯・納豆・みそ汁」といった今も続く伝統的な朝ごはんを食べていました。日本の朝食の歴史に納豆あり、です。

深野祐子[監修者プロフィール]
深野祐子(ふかの・ゆうこ)
管理栄養士・ジョギングインストラクター。Japanマラソンクラブでインストラクター兼フードアドバイザーとして市民ランナーに向け走り方の指導や食事の指導を行う。
【Japanマラソンクラブ公式サイト】http://www.jmcrun.com/

<Text:京澤洋子(アート・サプライ)>

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