【内田雅也の追球】走者三塁の威力と脅威 3回の佐藤輝のタッチは重要なプレーだった

2023年09月21日 08:00

野球

【内田雅也の追球】走者三塁の威力と脅威 3回の佐藤輝のタッチは重要なプレーだった
<神・巨>3回無死二塁、三盗を狙った長野はタッチアウト(野手・佐藤輝)(撮影・後藤 正志) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神4―3巨人 ( 2023年9月20日    甲子園 )】 野村克也がヤクルトや阪神での監督時代、ミーティングで選手たちに出した問題に「1死三塁で得点できるプレーは何々があるか?」というのがあった。
 この問題はもともと、アル・カンパニスが1954年に著した『ドジャースの戦法』にある。日本では、後にコミッショナーも務める内村祐之が翻訳し、ベースボール・マガジン社から57年に発行された。走者三塁で得点にいたるプレーが10項目記されている。
 (1)内野安打、(2)内野ゴロ、(3)失策、(4)暴投、(5)捕逸、(6)犠飛、(7)打撃妨害、(8)ボーク、(9)本盗、(10)スクイズ

 <これらはみな三塁走者にして初めて利用できるプレーであって、二塁走者がこれらによって得点するということはまずない>。走者三塁での攻撃側の威力(守備側は脅威)を記している。

 この夜はその走者三塁での攻防が一つの焦点だった。阪神側から見た経緯を書いてみる。

 1回表の先取点は1死三塁、内野が定位置に深く守り――つまり「1点OK」の守備隊形――、坂本勇人の二ゴロで失ったものだった。

 2回裏、同点の1点は1死二、三塁で巨人内野陣は深く守り、坂本誠志郎の遊ゴロであげた。

 3回表無死二塁の守り。門脇誠が送りバントでストライクを見逃し。飛びだした二塁走者・長野久義を刺した。バント成功で1死三塁ならばまたピンチだった。

 3回裏は無死三塁で相手内野陣は前進守備。浅い三塁手の右を中野拓夢がゴロで抜き、左前適時打となって勝ち越した。

 7回表の守り。丸佳浩に本塁打を浴びて同点。さらに1死三塁とされ、梶谷隆幸の二ゴロで勝ち越し点を献上した。詰まった当たりで前進守備の中野の右に転がり、懸命の本塁送球も間に合わなかった(記録は野選)。

 こう見ていくと、三塁を巡る攻防がいかに重要かがみえてくる。その点では3回表、三塁での佐藤輝明のタッチはどうだったか。相手のリクエストでリプレー検証になったほど。タイミングは完全にアウトであり、生かしていれば無死三塁。失点は覚悟しなければならなかった。

 それにしても、8回裏2死無走者から逆転し、巨人戦歴代最多の18勝と優勝を彩る記録がまた増えた。同じ関西のオリックス3連覇も祝いたい夜である。=敬称略=(編集委員)

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