【内田雅也の追球】左投げは「こうなる」の意味 岡田野球に通じる「ワン・シュア」の精神は徹底している

2024年02月17日 08:00

野球

【内田雅也の追球】左投げは「こうなる」の意味 岡田野球に通じる「ワン・シュア」の精神は徹底している
三本間での挟殺プレーの練習で三塁に送球する及川 Photo By スポニチ
 「投内総合練習」と名づけられたメニューが終わると、マウンド付近に全選手が集められた。コーチが注意を与えた後、監督・岡田彰布が身ぶり手ぶりを交えて、何か指示を与えていた。どうも、左腕で投げるしぐさを繰り返している。
 「左ピッチャーは“こうなる”からな」とヘッドコーチ・平田勝男に説明を聞いた。「こうなる」とはどういうことか。

 三本間での挟撃の話である。1死一、三塁。投前にボテボテのゴロが転がる。1―6―3併殺は無理なので、飛びだした三塁走者を投手が三塁に追い込むことになる。

 この時、三塁走者は白線よりやや外側のファウル地域を走っている。送球を待つ三塁手から見れば右側である。左投げの場合、その同じ右側から腕が出てくる。走者と重なるわけだ。三塁手は当然捕りづらくなる。

 現実にこの日も、桐敷拓馬は三塁に追い込み、三塁の寸前で投げた送球を三塁手は捕り損ね、走者を生かしてしまったことがあった。無死一塁、無死一、二塁、1死一、三塁……と状況を変えて、1時間ほど行ったメニューで数少ないミスだった。

 岡田は「こうなるやろ」と身ぶりで示した後、「だから、左投げはちょっと早めにボールを放してやらなあかんで」と、この日参加した左腕投手の桐敷、そして及川雅貴に助言を与えていた。

 なるほど、そういうことだったのか。今後、投手コーチを通じて、他の左投手にも伝えられ、広がることだろう。

 「より確実に、ということだろうな」と平田は言った。もう何度も何度も書いてきたことだが、岡田の野球は「確実」や「堅実」を重んじる。逆に「あわよくば」といった姿勢には落とし穴があるとみている。

 昨年2月のキャンプで早々と書いたが岡田は「ワン・シュア」、つまり「1つを確実に」という精神を徹底している。

 挟撃で2人の走者をともに刺す「重殺」を狙うプレーがあるが、岡田はその練習をあえて行わない。13日の連係練習でも選手たちを集め「まず1つ」と繰り返した。「複数ランナーで2つ殺しにいくよりも、まず1つ、確実にアウトにするということよ。その確認よ」

 「ワン・シュア」はより高まりを見せ、左投げの場合は「早めに」とまたコツが加わった。地味ではあるが、確実性を高める練習となった。 =敬称略=
 (編集委員)

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