【鷹論】84歳「世界の王」の野球への変わらぬ情熱を再確認した夏

2024年08月20日 05:00

野球

【鷹論】84歳「世界の王」の野球への変わらぬ情熱を再確認した夏
炎天下で世界少年野球大会を観戦したソフトバンク・王会長。左は中畑清氏(本紙評論家)
 84歳になったが、野球への情熱は少しも衰えることはない。100周年を迎えた甲子園にも、その姿があった。ソフトバンクの王貞治球団会長は「招待されてね」と8月15日に母校・早実と鶴岡東の試合を観戦。早実の2年生左腕・中村心大投手が、延長10回、足をつりながらサヨナラ打を放った1―0の熱戦に「両投手ともに素晴らしいピッチングで内容のある試合を見ることができました」とうれしそうに語った。
 炎天下での練習をこなしてきた球児でも、足がつる猛暑。観戦するだけでも難儀だ。だからこそ、84歳の行動力には頭が下がる。7月下旬から8月上旬までの間、福岡県内で世界少年野球大会が開催された。世界少年野球推進財団の理事長も務める王会長は当然、現場へ駆けつけた。「第1回大会は野球への感謝の気持ちで始めた。子供たちの笑顔、目の輝きが重なり30回目になった」と、屋内での開会式では子供たちとダンスに興じ、気温35度を超える球場にも姿を見せ、福岡のチームと台湾チームの試合を観戦した。

 1990年にあのハンク・アーロン氏と共同で始めた大会は、コロナ禍を経て5年ぶりに再開。よくある少年野球教室はプロ野球選手が、少年少女の球児に教える形式だが、この大会はほとんどが全くの素人。ボールを投げる打つから始まり、ホームステイなどを通じ、野球の楽しさを学ぶ。そして得た経験、知識を持ち帰るという草の根運動を続けた。「基本をしっかり覚えていれば上達は早いんだよ」と王会長。20年近く前にも大会を取材したが、子供たちにかける言葉は同じだ。

 アーロン氏は3年前の21年に86歳でこの世を去った。2人のホームラン王の思いとは裏腹に昨今の野球人口は減少の一途だ。ただ、世界の王は言う。「人間は途切れるものだけれど、思いはつながるんだ」。甲子園100周年の企画で、お願いしたインタビューでは「甲子園よ、永遠であれ」と締めくくってもらった。野球が野球であり続けることを信じ、命を燃やす。世界の王の変わらぬ情熱を再確認した夏だった。(福浦 健太郎)

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