【王将戦】菅井八段 剛腕で逆襲 筋トレで養った胆力見せる 島根・大田市で第3局
2024年01月27日 05:00
芸能
マイナスイメージのある「恥」という表現をプラスに捉える。勝負に対してストイックな菅井らしい。その自身への厳しさは私生活にも影響している。
かつてはランニングが趣味だったが、3、4年前から筋トレに励んでいる。“転向”の理由は「よりキツく、しんどい方がいい」。ウエートトレーニングを中心に、ベンチプレスは95キロ、デッドリフトは135~140キロを上げる。「王将戦の準備でしばらくジムに行けていない。数回やったらマッスルメモリーがよみがえるらしいので、また上がるようになると思いますよ」と笑った。
実は近年、棋士の間で筋トレブームが起きている。青学大パワーリフティング部主任コーチで、将棋チェスアカデミー「Dream AcademiA麻布」の早船正高塾長(56)は「鍛えることで棋力には直接つながりませんが、勝負どころでの胆力を支えてくれます」と話す。
頭を長時間フル回転させ、時には1局で体重が2キロも落ちると言われる将棋。秒読みの中での最終盤の駆け引きや、ねじり合った末の千日手指し直しなど、体力と気力が必要な場面も多い。早船さんは「そんな時の“もう一踏ん張り”が利くようになります」という。実際に菅井も「筋トレを始めて疲れにくくなった」と話しており、無尽蔵の体力も一つの武器になっている。
2連敗で迎えた第3局。落とせばカド番となるだけに、まさに背水の陣間際。菅井にとって今局は、そんな勝負の踏ん張りどころだ。「成績としては押されていますが、自分の将棋を指したい。全ての力を込めて、剛腕で頑張ります」。真っすぐ伸びた背筋に、力がみなぎっていた。
≪思い出深い地≫菅井にとってさんべ荘は思い出の地だ。6年前の夏に久保利明九段、深浦康市九段らとともに2泊3日で「将棋合宿」を開催。「朝7時から夜11時くらいまで指し続けました」と懐かしがった。今回使用する盤は20年前の第53期王将戦で使用したもので、裏面には羽生善治王将と森内俊之竜王の揮毫(きごう)入り。「その期は倉敷での対局を大盤解説場で見ていました」。感慨深い環境での第3局に向けて「自分の好きな手を精いっぱい指したい」と静かに決意を示した。