【世界陸上】やり投げ・北口榛花が大逆転金メダル フィールド種目で日本女子史上初「世界で一番幸せ」

2023年08月26日 04:30

陸上

【世界陸上】やり投げ・北口榛花が大逆転金メダル フィールド種目で日本女子史上初「世界で一番幸せ」
女子やり投げ決勝。最終6投目を投げ、気合を込める北口。見事、66メートル73のビッグスローで大逆転金を呼び込んだ(AP) Photo By AP
 【陸上・世界選手権第7日 ( 2023年8月25日    ハンガリー・ブダペスト )】 女子やり投げの決勝が行われ、北口榛花(25=JAL)が、金メダルを獲得した。昨年のオレゴン大会の銅メダルに続き、2大会連続メダルで、フィールド種目では日本の女子で初の金メダリストとなった。
 最後の最後で満開の笑顔がはじけた。1投目で61メートル78を投げて2位につけると、3投目に63メートル00を記録。だが、徐々に記録を伸ばしていったが、笑顔はなかった。リトルに記録を上回られ、4位で迎えた最終6投目。集中力は極限にまで高めた。絶叫とともに繰り出した、やりは美しい放物線を夜空に描く。66メートル73のビッグスロー。トレードマークの満面の笑顔。そしてダイナミックに飛び跳ねて、喜びを表現した。

 大逆転でつかんだ世界の頂点。飾らない言葉で、素直な心境を口にした。「興奮しすぎちゃってよく分かってないんですけど、最後の投てきで“自分が投げれる”って信じて良かったなと思いましたし、5投目までで終わっていたら後悔すると思って、必死に投げて良かったと思います」と一気に話した。

 悲願の金メダルを手にしたことに「本当はもっと時間がかかると思っていたんですけど、こうして取ることができて、今まで頑張って本当に良かったなと思いますし、自分が必ず歴史をつくると決めてここにやってきたので、本当に…。つらいこと、たくさんあるんですけど、今日だけは本当に世界で一番幸せです」と涙目で思いのたけを紡いだ。

 7月16日のダイヤモンドリーグ・シレジア大会(ポーランド)で日本記録67メートル04をマークし、世界ランキングトップでブダペスト入り。予選では、優勝候補として終始カメラに追われ「凄く緊張しちゃった」という。練習では歩数を間違えたそうで「私でもこんなことするんだ…と」と苦笑いで振り返った。「どの国の記者の方からも“金でしょ”とたくさん言われるようになったんですけど。自分の中での目標はメダルを獲って帰ってくること。その目標をぶらさずにそれだけを見て、着実にやりっていけたら」と北口。入賞狙いで銅メダルだった昨年とは、心境が全く違っていた。

 「そう簡単には、世界のお姉さま方は勝たせてくれない」。今季に向けては走り込みで助走スピードがアップ。その進化と技術がマッチせずに日本選手権で敗れたが、拠点のチェコに戻って修正。ウエートトレーニングの量を7割ほどに減らし、持ち味の肩の柔らかさを生かせるように姿勢矯正やマッサージなどに時間を割いた。

 68メートルまで飛ばせるイメージはできていた。さらに、ライバルたちの動画も良く見るようになった。「あまりやることがなくて…ヒマなの?っていわれますけど」。チェコでは、テレビをつけて欧州での試合をライブで見て研究した。だからこそ、周りの選手の底力は理解していた。動画で分析した上で「世界選手権に向けて世界中の選手全員が最高のパフォーマンスを準備していると思う。今まで調子良くない選手も変わる可能性もあると十分思う。誰が相手というより、自分の動きをしっかりできれば勝負できる」とあくまで自らの調整に集中を注いでいた。

 3歳で水泳を始め、地元のスイミングクラブに通いながら小学1年生からはバドミントンの選手としても活躍。高校までやり投げはおろか、陸上とも無縁だった北口が、やり投げと出会ってから10年。ついに世界の頂点に立った。

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