【内田雅也の追球】予感の「感覚的」見逃し 第1打席を見て佐藤輝が打つと分かった岡田監督

2023年08月26日 08:00

野球

【内田雅也の追球】予感の「感覚的」見逃し 第1打席を見て佐藤輝が打つと分かった岡田監督
<巨・神>2回、四球を選ぶ佐藤輝(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神8―1巨人 ( 2023年8月25日    東京D )】 阪神・佐藤輝明の第1打席を見たとき、監督・岡田彰布は「今日は打つな」と分かった。2回表無死一塁、8球目で四球を選んだ打席である。
 戸郷翔征のフォークを続けて空振りし1ボール―2ストライクと追いこまれてから、速球、フォークを見極め、ファウルで粘った。フルカウントとなり、岡田は一塁走者・大山悠輔をスタートさせた。リーグ3番目に三振の多い佐藤輝である。三振併殺の危険もある。だが、カウント3―2にいたる内容が良かったし「だからヒットエンドランにした。ちょっとでも当てにいくかなと思ってな」とサインを出した。

 すると、内角低めスライダーをしっかりと見極めたのだ。「あの見逃し方は良かったな」。好調が見えた選球だった。

 案の定、次打席で右翼線三塁打、次いで右中間へ2点二塁打を放った。

 田淵幸一(現本紙評論家)は「構えさえ、しっくりくれば打てた」と言う。感覚的、そして芸術的である。佐藤輝も「うまく見逃せば打てる」と感じているのではないか。似ている気がする。

 通算474本塁打の「ホームラン・アーティスト」と比べるのは失礼かもしれない。ただ、田淵は3年目まで61本塁打、打率・232だった。同じ大卒3年目の佐藤輝は目下58本塁打、打率・248と遜色ない。

 岡田は「(投手と)合う、合わんがはっきりしすぎ」と4、5打席目の凡退内容が不満だ。まだまだこれからだが、佐藤輝もアレへの波に乗り遅れまいと必死だろう。

 チームは「普通に」戦ってまた勝った。実際、岡田も驚いている。移動日だった前日24日、7月30日以来となる甲子園に出向いた。夏の高校野球が終わり若手主体の指名練習があった。

 監督室の壁に年間スケジュールが掲げられている。試合日程に勝敗、先発投手が書き込まれている。○ばかりが並んだ日程表で●を数えてみた。

 「おい」と近くにいた監督付広報の藤原通に声をかけた。「オールスター明けてから、まだ6敗しかしてへんぞ!」。7月22日再開の後半戦はこの夜で実に22勝6敗1分け、勝率・786。「ここまでとはなあ」と驚く真夏の進撃である。

 「普通にやってるだけやけどなあ」と岡田は首をかしげる。「まあ、選手はどんどん成長したよ。オレが何も言わんでも役割を分かっている」。感心し、頼もしく見つめていた。=敬称略=(編集委員)

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