将来の夢はプロ野球選手に医者、高校教師と個性派ぞろい 仙台一ナインは震災の思いも胸に吉報を待つ

2023年12月16日 08:00

野球

将来の夢はプロ野球選手に医者、高校教師と個性派ぞろい 仙台一ナインは震災の思いも胸に吉報を待つ
細かく分けられた練習メニューを見ながら練習の意図を語り合う仙台一の選手(撮影・村井 樹) Photo By スポニチ
 仙台駅から地下鉄で15分、荒井駅に降りると「仙台一高野球部専用駐輪場」と書かれた看板が目に飛び込んだ。学校からは約8キロ離れた場所にある練習場へは、毎日電車と自転車で向かう仙台一の選手たち。看板は「野球部のために」とわざわざ地域住民が設置したという。これだけ地域から愛される宮城県内屈指の進学校は、来春選抜の21世紀枠候補9校に選出され、1950年夏以来、選抜は初となる甲子園を夢見ながら厳しい冬を過ごしている。
 まさに個性派ぞろいの集団だった。将来の夢を尋ねるとプロ野球選手から高校野球の指導者、さらには医者までさまざま。卒業後は医学部を志望し、将来は医者を目指しているという伊東柊真投手(2年)は部活後も自宅で何時間も勉強していると聞き「本当にすごいね」としか言葉が出てこなかった。

 練習時間は毎日わずか2時間のみ。この2時間でより効率よく成長するために、全員が同じメニューを行うことはほぼない。藤森太壱学生コーチ(2年)が投手、捕手、内野、外野に分けた練習メニューを数十分間隔で細かく考え、それぞれの課題を克服するよう、グラウンドでは一度にさまざまな練習が繰り広げられていた。

 野球に打ち込むだけではなく、辛い記憶も忘れないように活動を続けている。東日本大震災では練習場が仙台市内では唯一、津波による甚大な被害を受けた。当時のことを風化させないように、部室には震災直後に撮影された写真が貼られている。グラウンド内に車までもが流されてきた写真からは被害の大きさがよく分かり、小川郁夢主将(2年)は「いつも見えるところにあり、これを見ると野球ができることが当たり前じゃないと思える。常に感謝しながらプレーしたい」と語った。

 19年からはグラウンド近くにある海岸の防災林の育樹活動もスタート。活動を通して地域住民との交流も増え、野球部の活躍を願う声も多く聞かれるようになった。小川主将は「選抜に選んでいただけたら地域の人も喜んでくれると思う」と笑顔を浮かべる。選抜出場校の発表は来年1月26日。多くの人のさまざまな思いも胸に、仙台一ナインはその日を心待ちにしている。(記者コラム・村井 樹)

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