【内田雅也の追球】好守連発が生んだリズム

2024年04月04日 08:00

野球

【内田雅也の追球】好守連発が生んだリズム
<神・D>初回、牧(右)の三ゴロ送球をすくい上げる大山(撮影・平嶋 理子) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神5-2DeNA ( 2024年4月3日    京セラD )】 守り勝ちだとみて会見場に行くと、岡田彰布は勝利監督インタビューで「守り勝ちですね」と口を開いた。「守りからリズムをつかんだ。去年もそうだったやろ」。ようやく優勝した昨年のような試合ができた。
 岡田が「守りの野球」を掲げるのは「確率の問題」である。「打撃は3割打てば一流で7割以上は失敗。守備率は9割8分から9分いく。より確実に戦うには守りを固めることよ」。水物の打線に頼らず、投手を中心とした堅守で確実に勝利をたぐり寄せるわけだ。

 この夜はいくらも好守があった。最初に目立ったのは一塁手・大山悠輔である。1回表2死、三ゴロ低投の送球をすくい上げた。「スクーピング」と呼ばれる技術はトップ級である。2回表1死には一塁線ゴロに飛びつきミットで触れた。二塁打コースの打球を単打で止めた。4回表先頭、佐野恵太の一、二塁間猛ゴロを逆シングル、横っ跳びで好捕。先頭打者出塁を防いだ。1点を追う展開で大きな守備だった。

 ちなみにきょう4日は1905(明治38)年、早大野球部が初の米国遠征に横浜から出港した日である。主将・橋戸信(頑鉄)は帰国後、見聞した内容を『最近野球術』に著し、公開した。日本の野球技術が高まった。

 同書に<フワースト、ベース>と一塁手についての項目がある。日本で<閑職>とみなしているが<米国にありては困難なる位置の一として研究せられつつある>。古くから一塁手の重要性を指摘していたわけだ。

 5回表1死一塁は木浪聖也が中前に抜けるゴロを横っ跳び好捕して併殺。6回表1死では中野拓夢が一、二塁間ゴロを美技で刺した。

 ここまで守れば、流れはくる。6回裏、四球、バントで同点機をつくると、森下翔太が左翼に逆転2ランを放ったのだ。

 「アメリカ育ちのスポーツは守りからリズムをつくるようにできている」と話していたのは元セ・リーグ審判員・平光清(故人)だった。米プロスポーツに造詣が深かった。「ほら、NBAで地元の観客が『ディフェンス!』と声を合わせて叫ぶでしょ。よく守ると、いい攻撃ができるのを知っているんですよ」。バスケットボールの話だがアメリカンフットボールも野球も同じという。

 やはり結論は「守り勝ち」である。岡田にも選手にも今季初めて、目指す野球ができた満足感があった。 =敬称略= (編集委員)

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