【内田雅也の追球】記録と記憶の非自責点

2024年05月15日 08:00

野球

【内田雅也の追球】記録と記憶の非自責点
<中・神>8回、石川昂に勝ち越しの2点適時打を打たれた村上(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神2―4中日 ( 2024年5月14日    豊橋 )】 野球の練習で「ボール回し」は一つの基本である。捕手・内野手が各塁に立ち、ボールを巡回させる。速さと正確さを高める。
 岡田彰布は一昨年秋、阪神監督に復帰した際、このボール回しにタッチの動作を入れるように指示した。タッチも速さ(あるいは強さ)が必要である。グラブを真上から真下へ、直下する格好で下ろす。ゴロ捕球では悪手の代名詞である「バッタ捕り」で構わない。

 「タッチ一つでチームを救える」と岡田は話していた。コンマ何秒、いや百分の数秒を争うプレーなのだ。

 阪神は、この一つのタッチで逆転負けを喫した。「チームを救える」はずのタッチが逆にチームを崩してしまった。

 2―1と1点リードの8回裏だった。好投の村上頌樹が先頭に二塁打を浴び無死二塁。続く送りバントは捕手の前にバウンドする失敗打球で、坂本誠志郎は捕球後素早く三塁に投げた。送球は正確で三塁上やや二塁寄りの絶好のボールだった。

 ところが、三塁手・佐藤輝明が捕り損ねた。落球で走者を生かし、1死一塁となるところが、無死一、三塁とピンチが広がったのである。

 村上はこの後、適時打2本を浴びた。再逆転を許し敗戦投手となった。投球数は130球と限界に近かった。味方のミスを救うほどの粘りの投球はもうできなかった。

 村上は失点4、自責点3だった。今季通算で失点14、自責点7。半分が非自責点で、防御率1・30でも2勝3敗と負けが先行している。

 非自責点とはつまり失策絡みの失点だ。阪神は今季、この非自責点が多く、リーグ最多22点に上る。同じく最多24失策が失点に絡むのだ。

 優勝した昨季も失策はリーグ最多85個に上ったが、非自責点は2番目に少ない44点にとどまっていた。岡田の言う「エラーは数やない。大事なところで守れるかどうかや」が実践できていた。

 岡田はセ・リーグ監督会議で「記録員はグラウンド状態も見て判定すべき」と提言していた。

 この日は地方球場。本拠地よりグラウンド状態は悪いのは仕方ない。

 公式記録員は正確に判定していた。3回裏の一塁左、4回裏の三塁右のゴロはともに外野に抜けたが、わずかに跳ねたとみたか「安打」。佐藤輝落球も正しく「失策」で記録に「非自責点」がつき、痛恨の記憶として残った。 =敬称略= (編集委員)

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