「光る君へ」伊東敏恵アナ 不安もあった平安大河の語り「無色透明」水のように…作品支える“引き算の美”

2024年03月04日 05:00

芸能

「光る君へ」伊東敏恵アナ 不安もあった平安大河の語り「無色透明」水のように…作品支える“引き算の美”
伊東敏恵アナウンサー Photo By 提供写真
 NHKの伊東敏恵アナウンサー(51)が、吉高由里子主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」(後8・00)で語りを務めている。品のある語り口で視聴者を優美な平安の世界に誘う。喜びと不安、ナレーションを務める上でのこだわり――。スポーツニッポンの取材に、静かに、丁寧に、そして力強く言葉を紡いだ伊東アナは、「『光る君へ』の世界観を壊すことがないように心掛けています」と作品への思いを語った。
 <※以下、ネタバレ有>

 「ふたりっ子」「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」などを生んだ“ラブストーリーの名手”大石静氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ63作目。千年の時を超えるベストセラー「源氏物語」を紡いだ女流作家・紫式部の波乱の生涯を描く。大石氏は2006年「功名が辻」以来2回目の大河脚本。吉高は08年「篤姫」以来2回目の大河出演、初主演となる。

 大河ドラマは戦国時代や幕末が描かれることが多いが、今作の舞台はきらびやかな平安貴族の世界。伊東アナは担当が決まった時の心境を「うれしいと同時に、実は不安がありました。平安時代の持つイメージが私の中で固定化されたものだったので、どういうふうにドラマになるのかが分からなかった」と率直に明かした。

 しかし、その不安は台本を読むと一蹴された。「今の時代に社会的なメッセージを発している。存分にこの世界を楽しもうとやっています」。大石静氏の描く世界に身を委ねながら、作品に声を吹き込んでいる。

 伊東アナは「事実に即して淡々と伝えることをベースにしている」とし、自身のナレーションを“水”や“空気”に例えた。「無色透明だけど、絶対ないといけない大事なものというイメージでやっている」。物語を引っ張るのではなく、“引き算の美”に徹して作品を縁の下から支えている。語りの分量が少ないからこそ、1つの言葉にかける熱量は高い。「少しでもトンチンカンなトーンの語りをすると、その世界観が壊れてしまう」。アクセント辞書に載っていない言葉や現在は使わない言葉は、制作サイドから考証の専門家に相談。まるで楽器を奏でるようにわずかなニュアンスにこだわっている。

 ここまでの放送回で特に印象に残っているシーンとして、第1話「約束の月」(1月7日放送)のラストを挙げた。逆上した藤原道兼(玉置玲央)がまひろの母・ちやは(国仲涼子)を背後から突き刺すという衝撃的な展開の中、「まひろという少女の、激動の運命が、動き出した」というナレーションが響いた。

 伊東アナは「ここでパーンと始まる感じがしないといけない。紫式部という名前は世界中の人が知っているけど、意外に知らないことがたくさんある。“意外に満ちあふれた大河ドラマが始まるんだよ、見てね”という気持ちを込めた」と回想。意識したことは、やりすぎずにワクワク感を出すこと。まひろの運命の始まりを丁寧に盛り立てた。

 伊東アナ自身、祖母の影響で短歌が趣味。「話すことよりも書くことの方が好き。紫式部の作品に関われることに、物凄く勝手に一方的な運命を感じました」と、不思議な巡り合わせにほほ笑んだ。中学生の時から日記を書き続けているといい、「言葉を通して自分の感情や行動、アイデンティティを記録して振り返るのは凄く尊い作業だと、大河ドラマを通して改めて感じています」と語った。

 ドラマでは、まひろや藤原道長(柄本佑)ら登場人物たちが、自らの気持ちを伝える大切な手段として和歌を詠む。伊東アナは「5・7・5・7・7に込める覚悟のようなものがあったと思う。書くという行為に秘められたメッセージ、書くことの重みを視聴者の皆さんに想像しながら見ていただきたい」と呼びかけた。

おすすめテーマ

2024年03月04日のニュース

特集

芸能のランキング

【楽天】オススメアイテム