河合優実主演 NHK話題作「かぞかぞ」地上波へ ドラマP語る「親ガチャという言葉が回る時代だから…」

2024年07月09日 09:30

芸能

河合優実主演 NHK話題作「かぞかぞ」地上波へ ドラマP語る「親ガチャという言葉が回る時代だから…」
ドラマ10「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」 主人公・岸本七実(河合優実)(C)NHK Photo By 提供写真
 女優・河合優実(23)の連ドラ初主演作「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」が、NHK総合ドラマ10枠(火曜後10・00)で9日から放送される。昨年5月にNHK・BSプレミアムで放送され、大きな反響を呼んだ作品が、満を持して地上波に登場する。同作を手掛けた坂部康二プロデューサーに、今の思いを聞いた。(中村 綾佳)
 原作は、SNSで話題となった作家・岸田奈美氏による同名エッセー。父が急逝し、母は突然車いすユーザーに、弟はダウン症…。そんな家族をめぐる、「楽しい」や「悲しい」など一言では説明ができない情報過多な日々の出来事を、笑えて泣けて、考えさせられる、心がじんわりあたたかくなる物語。ドラマでは岸田家や関係者への取材を重ね、独自の視点での脚色を加えて表現。映画「勝手にふるえてろ」で知られる大九明子氏が演出を手掛けた。

 物語の面白さはもちろん、その魅力を最大限に引き出した主演・河合優実をはじめとする俳優陣の演技も話題に。2023年のギャラクシー賞年間奨励賞、「第40回ATP賞テレビグランプリ」ドラマ部門奨励賞、さらにドイツで開催されたヨーロッパ最大規模の国際映像コンペティション「ワールドメディアフェスティバル2024」ではEntertainment-Mini-Series部門で銀賞と、国内のみならず国際的にも高い評価を受けた。

 ドラマ化を企画したのは、毎日放送「情熱大陸」やドラマ「作りたい女と食べたい女」などを手掛けた坂部プロデューサーだ。坂部氏は、SNSで流れてきた岸田氏の投稿を読み「面白い文章を書く人だな」と惹かれたという。その後、エッセーを読み、あまりの魅力にすぐに「この家族を描きたい」という衝動が走った。

 坂部氏はその感動に突き動かされるようにパソコンを開き、企画書にまとめた。坂部氏を突き動かしたのは、悲劇ともとれる境遇でも、波乱万丈な人生でもない。岸田氏がつむいだ「岸田家」の存在が、現代を照らす希望の光になると考えていた。

 「当時は“親ガチャ”という言葉が話題を集めていて。『当たり・はずれ』とか、どういう基準で誰が決めるんだろう、と私は考えていて。その時に、ふと思ったんです。この一家に“家族ガチャ”という言葉があるとしたら、岸田さんは何を思うのか。そんなことを考えること自体、いいのかなって」

 自分の力ではどうすることもできない運命を皮肉った“親ガチャ”という言葉。悲壮感が漂うこの言葉は、子供や若い世代が直面している格差問題を突きつけ、現代社会の息苦しさを表している。坂部氏は「家族に苦しめられたり、家族が居心地のいい場所じゃない人もいると思う。岸田さんの考え方や価値観、彼女の生き方は、何かヒントになるかもしれないと思った」と語る。

 父の死、母の病気、弟の障害…言葉だけを読めば、“悲劇”とも見られる人生を歩んでいるこの物語の主人公は、“ガチャ”には左右されない。母の障害を機に道を切り拓き、作家としての才能を発揮していく。

 本では「笑って泣ける」軽快なエッセーに仕上がっているが、坂部氏は「岸田奈美」という人そのものに焦点をあて、丁寧に取材。岸田氏の自宅を何度も訪問し、家族の輪郭をなぞっていった。

 「単なる再現ドラマだったらドキュメンタリーでいいだろう。でも、ドラマにする上で、本を読むだけでは伝わらない部分を描けたら…と。岸田さんは面白おかしく文章に書かれましたが、あえて書かなかったこととか、書けなかったこととかが、たくさんあるだろうなと。この物語を書くまでにどんな出来事があって、その感情をどう転換して、この文章になったのか…というところに、凄く興味がありました」

 ドキュメンタリー制作の経験豊富な坂部氏の丁寧な取材に、岸田氏も答えた。本では書ききれなかったネガティブな感情を打ち明けることも…。こうして、ひとつの物語として厚みを増していった。

 坂部氏は「手前味噌ですが、いち視聴者として観ても本当にいいドラマだなと思います」と胸を張る。「8話・9話・10話は、企画した自分ですら想像を超えたところにいっていて。何度も見ていますが、毎回泣いてますよ、僕」と、その仕上がりに目を細める。「家族だから愛さなきゃいけないっていう、ある種の固定観念からは、ほどいてくれるのかな。“家族なんてマジ勘弁…”って思っている人にこそ、見てもらえたら。そんな人ほどドラマを見る余裕はないのかもしれないですが、どこかのタイミングで巡り会えたら、見てもらえると凄く嬉しいです」と思いを込めた。

 この物語は、いわゆる“お涙ちょうだい”なドラマとは一線を画す。その魅力は、見たものにしか語れない。言葉では伝えきれないもどかしさもある。坂部氏も「『笑って泣ける新感覚令和のホームドラマ』というふうに宣伝を打ち出しているのですが…あまりに単純で、いろんなものがこぼれ落ちていると思うんです」と吐露する。

 言えるのは、「1話だけ、まずは1話を見てほしい」ということ。坂部氏は「今どきのドラマにはあまりないような魅力がいっぱい詰まっております。1話をまず、ぜひ見ていただきたいです」と呼びかけた。

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