阪神・青柳、復活の“ただいま” テレビから目を背けた母…親不孝した47日間取り戻す決意秘めて力投

2023年07月12日 06:30

野球

阪神・青柳、復活の“ただいま” テレビから目を背けた母…親不孝した47日間取り戻す決意秘めて力投
<神・D> 5回のピンチを無失点で切り抜けた青柳 (撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神7-2DeNA ( 2023年7月11日    倉敷 )】 阪神の青柳晃洋投手(29)が11日、DeNA戦で7回6安打2失点と好投し、5月12日の同戦以来60日ぶりの白星となる3勝目を挙げた。開幕から不振に陥り、2軍降格も経験して帰ってきたエース。復活の裏には1軍で投げる意味を再確認した日々や先輩からの厳しい言葉もあった。チームは首位攻防3連戦の初戦を制してゲーム差を2に拡大。投手陣の柱が6月3、4日以来1カ月ぶりの連勝を呼び込み、再加速への準備は整った。
 復活の“万歳”に見えた。1点優勢の5回。2死二、三塁の窮地で関根を三邪飛に仕留めた青柳は、両手を挙げた。取り組んできたカーブやカットボールも交え、要所を締めて7回6安打2失点。5月12日以来、60日ぶりの白星をかみしめた。

 「(再昇格の)一発目である程度投げられて僕にとっても大きな1勝。チームにとっても勝てたのは大きい」

 「長かった」と振り返る2軍での日々は“気づき”の時間でもあった。エスコンフィールドで行われた6月9日の日本ハム戦。既に再調整中で背番号17はいなかったが、スタンドには母・利香さんの姿があった。金曜日になった登板日を見越し、北海道旅行も兼ねて新球場での投球を見届けるつもりだった。

 「俺、2軍行くから北海道で投げることはないわ」。母には、そう連絡を入れた。これまで趣味のカメラを肩に掛けて球場で生観戦することも多かった利香さんに快投を見せることが親孝行だと思って腕を振ってきた。

 「何が悔しいって、毎週当たり前のように楽しみにしていた親に試合を見てもらえなくなったことですね。その楽しみを奪ってしまったのが悔しい」

 そして母もまた、息子を今までのような心持ちで見守れなくなっていた。序盤から打ち込まれることも多かった今季。利香さんはテレビから目を背けることも増えたという。

 「本人には言えないですけど、私は怖くてしょうがないんです。今年は初めてテレビを見ていて、消しました。(7失点した)甲子園の広島戦の時とか見ていられなくて…」と利香さん。昇格の懸かった2日のウエスタン・リーグ、オリックス戦も「具合が悪くなりそうでした」と、ぐっとこらえながら祈っていた。

 2軍で過ごした47日間。今までは思いもしなかったという「1軍で投げる意味」を知った。「この4年間は当たり前のように僕もローテで回っていた。そんな中で母以外でも僕の登板を楽しみにしてくれてる人がいる。その楽しみを奪ってしまうことがあるんだと。それは2軍に行って気づけたことです」

 再昇格が決まると「また上がるよ」と利香さんには短い言葉で伝えた。もう2軍に戻るわけにはいかない――。母に、仲間に、支えてくれたみんなに…決意のこもった80球。「やっと帰って来れました。今年一番うれしい一勝になった」。青柳の“ただいま”が倉敷の夜に響いた。 (遠藤 礼)

《岡田監督が魔法の言葉》
 岡田監督は試合直前、悩めるエースに直々に言葉をかけていた。「切羽詰まったじゃないけど、(結果を)気にしてるようだったから。そんなん関係ないって言うた。後半戦はローテーションで投げなあかんわけやからって。楽にいけと」。2軍降格を経ての復帰戦は重圧がかかる。新聞報道で青柳本人のコメントも目にして心情を察したという。期待に応えた右腕も試合後、「気楽になりました。自分の投球をして楽に投げろと言っていただいた」と肩の力を抜いて登板できたことを明かした。

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