【内田雅也の追球】成長見せた「スミ1」勝利 踏ん張った阪神・才木も成長見せる変身だった

2023年09月07日 08:00

野球

【内田雅也の追球】成長見せた「スミ1」勝利 踏ん張った阪神・才木も成長見せる変身だった
<中・神> 6回2死一塁、カリステは空振り三振に倒れる(投手は才木) (撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神1-0中日 ( 2023年9月6日    バンテリンD )】 9月6日だった。映画『スタンド・バイ・ミー』で12歳の少年4人が2日間の冒険を終え、故郷の町キャッスルロックに帰る日だ。主人公ゴーディが「日曜日の朝5時。労働者の日(9月第1月曜)の前の日だった」と回顧している。舞台となった1959年のカレンダーを見ればわかる。
 「なぜか町が違って見えた。小さく感じられた」。旅の間に成長していたわけだ。

 阪神監督・岡田彰布も似た感慨を抱いているのではないか。表だって口にしないが「選手たちは知らん間にうまくなり、チームも強くなっていたなあ」と成長をみているはずである。

 1―0勝利は「守りの野球」を掲げる岡田の理想でもある。今季5度目になる。この夜はしかも「スミ1」。1回表の最少得点を9回にわたって守り切った。

 11安打しながら1点の拙攻。バントや走塁ミスが相次いだ。普通は逆転される流れだが勝ちきった。これも成長だろう。岡田は素っ気なく「目標の違いだろう」と言い、優勝へ向かう首位チームと最下位チームの違いを見ていた。

 腰の張りなどもあり、約1カ月ぶり登板の先発・才木浩人は6回無失点で7勝目がついた。

 才木と言えば、今夏のオールスター戦の合間、全セコーチでベンチ入りしていた岡田は巨人・岡本和真に話しかけられた。人懐こく、岡田と肩を組んだ写真を撮り、SNSにアップしていた。

 岡本は「僕は才木のフォークは絶対に打てません」という。隣にいた中田翔も「僕もあのフォーク、打てません」。

 調べると才木は岡本を12打数無安打4三振(決め球はすべてフォーク)、中田を6打数1安打2三振に抑え込んでいた。

 この夜はそのフォークでいつものように空振りを奪えなかった。見極められ、当てられた。奪った三振は4個。フォークが決め球だったのはオルランド・カリステからの2個だった。

 それでも速球は150キロ台。スライダーやカッターをまじえ変身した投球術でしのいだ。1、4、6回と得点圏に走者を背負いながら決定打を与えなかった。成長を見る踏ん張りだった。

 映画では旅で自信が芽生えたゴーディが言う。「何だってできるさ」

 そう、可能性は無限に広がっている。阪神も何だってできる。岡田も「まだまだ強くなる」と話していた。 =敬称略=
 (編集委員)

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