【内田雅也の追球】「半ドン」に見える自信と余裕 選手の自主性や自覚が根底にあればこそ

2024年02月20日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「半ドン」に見える自信と余裕 選手の自主性や自覚が根底にあればこそ
練習を見つめる阪神・岡田監督 Photo By スポニチ
 「半ドン」は今や死語らしい。何人かの若い球団職員に聞いたが、知らなかった。選手たちも「聞いたこともない」と話している。
 「半分休日」を意味する。由来には諸説ある。ドンはドンタクの略でオランダ語で休日を意味する「ゾンターク」に由来するらしい。いや、明治時代から日米開戦まで正午に空砲を「ドン」と撃つことから、土曜日半休の合図になったとする説がある。大阪城も空砲を撃っており、城下の大阪・玉造出身の阪神監督・岡田彰布には、こちらの方が親しみやすい。

 今では週休2日が定着し土曜日も全休。午前中で学校も仕事も終わる「半ドン」はすっかり使われなくなった。

 19日の阪神は今キャンプ2度目の短縮練習「半ドン」だった。ランチタイムは設けていない。前回は14日。ともに5勤のなかの1日で、疲れを癒やす意味がある。

 岡田が今月初め「長い時間練習して勝てるんなら何時間でも練習したるわい」と語ったのを覚えている。監督に復帰した昨年のキャンプでも選手たちに「はよう帰れ」と言った。もともと、だらだらと長い練習を嫌う。

 さて「半ドン」の全体練習は午後1時すぎに終了。だが、選手たちは途中で軽食をとり、打ち込んだり、個別で練習したりしていた。

 根底には選手たちの自主性や自覚がある。岡田に近いフロントマンは「監督は、野手で言えば、大山、近本、木浪、中野……ら主力の姿勢を信頼しています。他の選手たちにも影響を与えていますから」と話していた。

 昨年日本一となった余裕や自信が感じられる。案じるのはその裏返しの慢心や過信、油断だ。

 ただし、2日前(17日)、宜野座を訪れた本紙評論家・中畑清が「過信、慢心するのも十分にわかる」と語っていたのを思い出す。岡田と50分ほど話した中畑が「この陣容と調整具合をみれば、連覇しないという方がおかしい」とまで言った。「自信も余裕もある。はた目には過信や慢心と映っても仕方ない。それほど強いよ」。さらに巨人OB会長としては「うらやましい」と漏らした。

 この日は最高気温26度の汗ばむ夏日だった。季節は二十四節気の「雨水」に入った。空から降る雪が雨に変わり、田畑を潤し、農耕を始める季節の目安である。阪神は秋の実りに向け、着々と土を耕し、種をまいていた。 =敬称略=
 (編集委員)

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