DeNA「部長進化論」連載<4> 100年先のプロ野球を見据えてデータと向き合う吉川氏の進化論

2024年02月20日 12:00

野球

DeNA「部長進化論」連載<4> 100年先のプロ野球を見据えてデータと向き合う吉川氏の進化論
DeNAの吉川健一チーム統括本部データ戦略部部長(左から2人目) Photo By スポニチ
 DeNAのチームスローガン「横浜進化」にちなみ、球団部長の日々の奔走を紹介するDeNA「部長進化論」。キャンプのオフに紹介する5回連載第4回は、メガバンクから転身しDeNAとプロ野球界の100年先を見据えてデータと向き合う吉川健一チーム統括本部データ戦略部部長(36)を紹介します。(構成、DeNA担当・大木 穂高)
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 22年11月からデータ戦略部長に就き2年目。吉川氏は球団内におけるデータ戦略の進化には「手応えがある」と力強い。

 投手の各球種ごとの評価を定める「ピッチバリュー」という指標。同部では昨年、その指標をさらに細分化しデータをより克明にした「ピッチングプラス(以下PP)」という指標を開発した。「どのように投手の球質を上げれば1軍打者に通用するか、ピッチバリューを参考に独自につくりだしました」と説明する。

 PPが球団内で貢献した分野は、現状今オフのドラフトと補強中心。特に戦力外選手の獲得では数いる選手が放出された中、プロスカウトの評価とPPの評価を融合し、DeNA投手陣と遜色ないと評価した投手たちを補強した。

 そして今季、吉川氏は新たに全143試合に同行し、PPを含めたデータ収集の作業に臨む。「1試合ごとにデータを収集したあと、これらのデータをすぐ活用していきたい」と声を弾ませた。

 学生時代は野球部に所属も、大阪大学大学院まで進むと基礎工学研究科で「確率論、金融工学を研究した」という。つまり、数字に強いバリバリの「理系」だ。

 そしてメガバンクに入社し、日本銀行にも出向する本筋を歩んできたが、野球が心から離れなかった。出向を終えた18年4月、球団との縁ができ同年12月入社。「妻からのあと押しもあり、チャレンジしてみるかとなりました」と英断した。

 当初から配属は戦略部門。R&D(リサーチ&ディベロップメント)グループのデータサイエンティストとなったが、当時はまだ同部門と選手との関係性も密ではなかった。

 「手探りでした。例えば“ブラストモーション”というセンサーでバットの軌道を分析しても、選手から“じゃあ僕はどうすればいいんですか?と聞かれ、正解不正解がわからなかった」と振り返る。

 その後、動作解析の第一人者、筑波大の川村卓准教授(硬式野球部監督)との連携を深める中で、球団内のデータ戦略強化の一端を担ってきた。現在は、現場コーチ陣との連携も緊密。「現場との意見を創発させ、よりよいものをつくりたい」と目を輝かせた。

 部長としては、2つの部署、R&Dグループ(データ、動作解析など)とゲームアナリストグループ(ゲームアナリストは他球団で言うスコアラー)をマネジメントする。

 だが、一方で吉川氏は未来へ向かう責任も背負っている。「我々のビジョンは、100年先へ野球をつなぐこと。成功体験を発信し、プロ、アマの野球界に貢献したい。今、まさにそれを仕掛けているんです」と意気込んだ。

 横浜進化、それはフィールド上での戦いだけではなく、球団全体の「進化」の合い言葉であることを吉川氏の言葉が示している。

 ◆吉川 健一(よしかわ・けんいち) 1987年(昭62)8月10日兵庫県神戸市出身の36歳。白陵中学、高校では野球部。投手、内野手、捕手と複数ポジションを経験。高校最後の夏は兵庫大会3回戦敗退。大阪大でも野球部に所属し大学院に進んだ。メガバンクに就職後、日本銀行出向も経験し18年12月にDeNA入団。データ戦略中心の仕事に携わり、22年11月から現部長に就いた。

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