パリ五輪まで半年 五十嵐カノアが誓う“運命の海”で金メダル
2024年01月26日 04:45
サーフィン
「子供の時は、ここで五輪が開かれるという夢はなかった。なぜ毎年練習しにいったか、自分でもよく分からない。いつか五輪が開かれると、誰かから言われていたのかな」
世界の波乗りたちが憧れる聖地は、シーズンになれば常時2~3メートル、最大で7メートル級のチューブ(筒状に巻く波)が発生し、同時に命の危険も伴う。トップ選手も命懸けで挑む海を初めて訪れたのは「体重は40キロくらいしかなかった」という12歳の時だった。
「溺れちゃうくらいのパワーがあった。一生戻ってきたくない。それくらい怖かった」。11歳で全米学生連盟(NSSA)主催大会で30勝を挙げた神童をしても、恐怖心だけが脳裏に焼き付いた。帰宅すると母・美佐子さんには「もう二度と行きたくない」と宣言。ただ、その後の内なる決意が、サーファー人生の分岐点となる。
「部屋に隠れちゃダメだ。いつかプロになりたいなら、難しい、怖い波でも頑張らないといけないと思った。その当時に怖さに勝ったことが大切だった」
翌年以降も通い、次第に恐怖心を克服。レギュラースタンス(左足前)の五十嵐は波に背を向けて乗らざるを得ないため不利とされるが、22年8月のチャンピオンシップツアー(CT)第10戦で9・70点(10点満点)という究極のハイスコアをマーク。今や金メダル候補の一角に挙がる。
東京五輪翌年の22年はCTで過去最高の総合5位に食い込み、9月のワールドゲームズ(WG=世界選手権に相当)を初制覇。キャリア最高成績を残した。一方で23年はCT14位と4季続いたトップ10から脱落。外見上は五輪へ不安の残るシーズンだったが、五十嵐本人の実感は異なる。
「一年という時間を使って、全部で15個くらい変えたことがある。一番は板。材料とデザイン(形状)を変え、重さも前より軽めにした。コーチ、食事、トレーニング、メンタルトレーニングも変えた。ビッグリスクだけど、五輪のためだけではなくて、あと5、6年のキャリアのためにアジャストした」
足場固めの23年から、結果を求める24年へ。金メダルの自信は「95%」と語る。残りの5%は?答えも明快だ。「準備はできているけど、100%の自信はサーフィンでは絶対にない。なぜなら自然が相手だから。ただ、準備はこれ以上はできないと思っている」
人事を尽くして天命を待つ。12歳から通い続けた運命の海で、ゴールデンウエーブをつかむ日を信じて。(阿部 令)
五十嵐の24年初戦はCT第1戦のパイプ・プロ(29日開幕、米ハワイ)。2月の第2戦(同)後にWG(2月22日開幕、プエルトリコ)に出場し、ここで正式にパリ五輪代表に内定する。その後はチョープーで開催されるCT第6戦(5月22日開幕)などを経て、五輪本番(競技日程は7月27~30日を予定)に臨む。
◇五十嵐 カノア(いがらし・かのあ)1997年(平9)10月1日生まれ、米カリフォルニア州出身の26歳。両親の影響で3歳から競技を開始。9歳で米国アマチュアチームの強化指定選手入り。13歳でプロ転向し、16年からプロ最高峰のCTに参戦。18年に日本へ登録変更し、19年5月にCTで初優勝。21年東京五輪銀メダル、22年WG優勝。昨年9月からハーバード大のビジネススクール(大学院)に通う。カノアはハワイの言葉で「自由」の意味。1メートル80、78キロ。
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