【内田雅也の追球】「秘策」上回る「ドラマ」 まさに優勝チームらしい戦い方になってきた

2023年08月10日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「秘策」上回る「ドラマ」 まさに優勝チームらしい戦い方になってきた
<巨・神>7回2死二塁、中田(左)に左越え2ランを打たれた桐敷(撮影・小海途 良幹) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神5-2巨人 ( 2023年8月9日    東京D )】 阪神監督・岡田彰布は「秘策」を持って臨んでいた。先発右腕ジェレミー・ビーズリーの早期降板―左腕・桐敷拓馬のロングマン起用というダブル先発プランだった。
 勝利監督インタビューで「本当は3回で(ビーズリーを)代えようと思っていた」と明かした。3日・中日戦で好投し、来日初勝利をあげたビーズリーは中5日。加えて出産直後の妻子と過ごす時間を与えており、調整が難しかった。救援で5試合連続無失点と評価を上げる桐敷を早めに投入し、巨人打線を戸惑わせる思惑があった。

 予告先発制度がなかった前回監督当時、大方の予想とは異なる、意外な先発投手を起用して成功させていた。翌日のメンバー交換時、巨人監督・原辰徳が「正々堂々と戦いましょうよ」と嘆いていたそうだ。今回も「原はどう思うやろうな」と関係者に漏らしていた。

 ビーズリーは期待以上の好投で5回無失点。まだ68球だったが、0―0の6回裏から継投、秘策を実行に移した。桐敷は6回裏を3人で抑え7回表に1点先取と筋書き通りに進んでいた。

 ところが、野球は何が起きるか分からない。7回裏2死無走者、ルイス・ブリンソンの左飛を島田海吏がまさかの落球。続く代打・中田翔に逆転2ランを浴びたのだ。

 筋書きは狂った。岡田が「すんなりいけば良かったが……。9回で終わっていれば……」と話した無念はよく分かる。代走から守備固めの島田凡失など想定外だった。

 それでも今の阪神にはミスを取り返すチーム力がある。8回表に中野拓夢が右翼席に4月以来の2号ソロを放り込んで同点。延長11回表に3点を奪って勝ちきった。

 想定外の事態に陥っても最後は勝つ。まさに優勝チームらしい戦い方になってきた。島田は失策後2度、好機で打席が回りながら凡退。梅野隆太郎決勝打の際は二塁走者として三塁封殺にあい「センターゴロ」にしてしまった。勝利によく感謝し奮起しよう。またチーム力が高まる。

 「野球は筋書きのないドラマ」とは名将・三原脩の言葉だ。著書『風雲の軌跡』に<選手は惑星である。この惑星、気ままで時には軌道を踏み外そうとする。その時、発散するエネルギーは強大だ>とある。

 指揮官の描いた筋書きを上回るドラマは、成長する選手の力が生んでいた。=敬称略=(編集委員)

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