元阪神・フィルダー氏 盟友・岡田監督にエール 世界一知る男が伝授した短期決戦の心得とは…

2023年10月24日 05:15

野球

元阪神・フィルダー氏 盟友・岡田監督にエール 世界一知る男が伝授した短期決戦の心得とは…
現役時代の岡田彰布監督(右)とフィルダー氏 (1989年2月18日撮影)
 元阪神のセシル・フィルダー氏(60)が23日、スポニチの独占インタビューに応じた。日米通算357本塁打を誇る伝説の助っ人。現在は米フロリダ州で暮らす元虎戦士が、古巣への思い、岡田監督やファンへの感謝、そして注目選手を激白した。28日にはオリックスとの日本シリーズが開幕。85年以来2度目の日本一を懸けた頂上決戦に臨む猛虎に、海の向こうから熱いエールを送った。(取材・構成 山本 浩之、那須 日向子)
 ――日本時間の12日、久しぶりに阪神・岡田監督らとオンラインで再会した。その時の気持ちは?
 「日本での思い出がよみがえったよ。岡田さんを含め、チームメートは私が初めて日本に来た時も、とても親切にしてくれたんだ。岡田さんは何をすべきか、日本の野球を教えてくれた。だから、いつも岡田さんのことは応援しているよ」

 ――今でも古巣の阪神は気になる?
 「当たり前だよ。今の阪神にとても興味があるし、理解しているつもりだよ。私は現役を引退して何年もたっているけど、もし岡田さんが必要とするならコーチでも何でも、いつでも助けに行きたいと思っている。私が日本に行った当時、本当に良くしてくれたから、彼には本当に感謝しているんだ。本当にいい人だよ」

 ――28日から日本シリーズが開幕。阪神は85年以来の日本一を懸けてシリーズに挑む。
 「もし優勝したら、とても素晴らしいことだ。岡田さんが日本一を獲ったら、こんなにおめでたいことはないよ。みんな阪神が勝つことを待っているんだ。だから何としても勝たないとね」

 ――96年にはヤンキースで世界一に貢献。自身の経験を踏まえ、短期決戦の戦い方は?
 「レギュラーシーズンと短期決戦は全く違う。私もワールドシリーズを経験したが、ポストシーズンは、みんながみんないい状態じゃなくても、1人か2人凄く調子のいい選手がいれば勝つことができるんだ。レギュラーシーズンは140試合以上もあるけど、ポストシーズンはたったの7試合ほどだからね」

 ――短期決戦を制するための重要なポイントを教えてほしい。
 「短期決戦で大事なことは守備とピッチングだ。ただ、もっと大事なことは“チームの姿勢”。常にポジティブでいることだ。96年のワールドシリーズの時もそうだった。チームのみんなが、どんな時でも、最後まで勝利を信じていた」

 ――阪神には大山、佐藤輝という日本人の強打者もいるが、知っているか?
 「動画でよく見ているよ。とてもいいよね。特に佐藤輝は、まだ若いのに力があって凄い打者だね。アスリートとしての能力もとても高い。ただ“パワーヒッター”というのは本塁打だけじゃないんだ。安打で点を稼ぐことも大事。仮に40本塁打を打ったとしても、安打が少ないようならダメ。私みたいに40本塁打を打って、安打も量産することが大事だね」

 ――阪神在籍は89年の1年。長い野球人生の中で、その1年は特別なものだったか?
 「もちろんさ。阪神ファンは私をスーパースターにさせてくれた。とてもいい思い出なんだ。当時のことは今でも鮮明に覚えているし、本当にかけがえのない日々だったよ」

 ――強く印象に残っている阪神での思い出を教えてほしい。
 「安芸キャンプだね。例えば(88年まで在籍していたランディ・)バースとか、私の入団前後もチームには素晴らしい選手がたくさんいたから凄くプレッシャーを感じていた。でも、岡田さん、真弓(明信)さんら多くのチームメートが何をすべきか本当に親切に教えてくれたし、日本の野球に適応できるように、とにかく助けてもらったんだ」

 ――近況を教えてほしい。
 「とてもリラックスしているよ。大好きな家族、子供たちに囲まれて本当に幸せな日々を過ごしているよ。次男が大学でアメリカンフットボールをしていて、先日も試合を観戦してきたところなんだ。いい妻と子供たちがいて本当に最高だよ。実は9月に60歳になったばかりなんだ」

 ――野球は恋しくないのか?
 「全くだね(笑い)。ただ、もし岡田さんが私を必要とするなら日本へ飛んで助けに行くよ」

 ――現在の阪神で注目している選手はいる?
 「ミエセスだね。実は(12日に)岡田さんともミエセスの話をしたんだ。彼の姿を見ていると日本にいた当時の自分を思い出す。適応能力もあるし、彼はきっとスーパースターになると思う。ただ、そうなるための条件はあるよ。“日本でパワーヒッターになるには、どうしたらいいかを知っている人(私みたいな人)”が必要かもしれないね。日本のパワーヒッターとアメリカのパワーヒッターは違うんだ。そもそも日本とMLBでは試合の戦略が全く違うことを理解しておかないといけない。私は日本とアメリカのピッチャーの違いを感じてきた」

 ――ミエセスは“フィルダー2世”になる可能性があるのか?
 「日本の野球に適応するように少しアプローチの仕方を変えれば絶対にいい選手になれるよ!他にも阪神にはいい選手がたくさんいるけど、私に言わせればミエセスは特別。チームにとって凄くプラスになっているし、きっと25~30本塁打を打つだろう。阪神にとって大きな助けになっていくと思うよ」

 ――もし、来春キャンプなどで臨時コーチ等を依頼された場合、教えたい選手はいる?
 「もちろん喜んで引き受けるよ!特にミエセスを教えたいね。彼が強くなれば、例えば25~30本塁打ぐらい打てるようになれば、チームももっと強くなるはずだ」

 ――最後に岡田監督、阪神ファンにメッセージをお願いしたい。
 「(日本語で)オカダサン、グッドラック!ガンバッテクダサイ!会える日を楽しみにしているよ。甲子園球場、阪神ファン、ナンバーワンだ!」

 ◇セシル・フィルダー 1963年9月21日生まれ、米カリフォルニア州出身の60歳。阪神入りした89年、広島との開幕戦で来日1号。9月に故障で離脱するまで38本塁打を放った。阪神退団後はタイガースでメジャーに復帰し、90年から本塁打王を2年連続、打点王を3年連続で獲得。96年途中に移籍したヤンキースでワールドシリーズ制覇に貢献。日米通算357本塁打をマークし、インディアンス在籍の98年限りで引退。阪神在籍時は1メートル88、101キロ。右投げ右打ち。長男のプリンスも大リーガーで、ブルワーズ時代の07年に本塁打王、09年に打点王を獲得するなど通算319本塁打をマークした。

 ▽96年ヤンキースの世界一 ワールドシリーズでJ・スモルツ、G・マダックス、T・グラビンら豪華先発陣を誇るブレーブスと激突した。第1戦はのちに楽天入りする19歳のA・ジョーンズに2本塁打を浴びるなど1―12で大敗し、第2戦も0―4で敗れたが、第3戦から4連勝で78年以来18年ぶりの世界一に。同年新人王の遊撃手D・ジーター、エース左腕A・ペティットらを擁するヤ軍でフィルダーはB・ウィリアムズ、T・マルティネスらとともに中軸を組み、第3戦以降は4番を務めて6試合合計で打率・391(23打数9安打)と気を吐いた。

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