【内田雅也の追球】山本由伸を攻略するために立ち返る原点 「怪物」も「大魔神」も真っすぐを打ってきた

2023年10月24日 08:00

野球

【内田雅也の追球】山本由伸を攻略するために立ち返る原点 「怪物」も「大魔神」も真っすぐを打ってきた
<阪神全体練習> 甲子園での全体練習を見守る岡田監督(撮影・大森 寛明)
 岡田彰布が生涯最高の速球投手と認めるのが江川卓である。
 1973(昭和48)年春のセンバツ、開幕試合で作新学院・江川を生で見た。入学が決まっていた北陽のアルプススタンドだった。前年秋の公式戦、練習試合を含めて23試合無失点、防御率0・00。江川はすでに「怪物」と呼ばれていた。

 1回表、北陽3者三振。しかもバットに当たらない。2回表1死、有田二三男が初めてファウルした時、超満員の甲子園がざわめいた。結局19三振を喫して北陽は完封された。4番打者・藤田寛は4三振。「それも空振り12個。全部空振りだった」と記憶に刻まれた。

 その江川と東京六大学で初めて対戦した。早大1年、76年秋のリーグ戦。法大・江川から3打数3安打した。三塁線突破の二塁打も2本あった。翌日も1安打した。

 打ったのは直球だ。江川には直球とカーブしかない。「真っすぐを打てるかどうか」が勝負だった。これが原点にある。

 プロ入り後、「大魔神」と呼ばれた大洋・横浜(現DeNA)の佐々木主浩に強かった。クローザーに定着した91年はリーグ最多58試合に登板。速球に落差の大きなフォークが切り札だった。

 当時阪神打撃コーチだった佐々木恭介は頭を痛め、岡田に「打席で一体何を待っているんや?」と聞いた。岡田は「真っすぐですよ」と答えた。「フォークは大抵ボール球だし、打つ球じゃありません。打つ練習もしていない。打ち方を教えてもらってもいません」

 やはり原点に返っている。だから、監督として日本シリーズに挑む今、オリックスの難敵、山本由伸の攻略法も同じである。つまり「真っすぐを打て」である。この日、甲子園での練習後、報道陣の質問に答えた。

 「どんないい投手も真っすぐが基本にある。その真っすぐを打ち返す。そういうことよ」

 相手が好投手であればあるほど闘志が沸き立つのは打者としての本能でもある。それは監督となった今も変わらない。

 NPB統計・分析サイト『TSUBASA』によれば、山本が今季投じた2435球のうち、直球は41・7%を占める。フォーク26・4%、カーブ15・6%、カットボール8・5%……。多彩な変化球がある投手だが、直球中心は変わらない。

 岡田は選手に難しい要求はしない。「真っすぐを打て」で攻略に挑む構えでいる。 =敬称略=
 (編集委員)

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