栗山英樹氏 今の時代だからこそ大切にしたい「形」

2023年11月07日 05:00

野球

栗山英樹氏 今の時代だからこそ大切にしたい「形」
三原氏(右)と水原氏(左)の銅像の前に立つ栗山氏                                Photo By スポニチ
 【栗山英樹 帰ってきた熱中先生】大恩人だった中西太さんのお別れの会で高松市を訪れた3日、高松中央公園に足を運んだ。この公園はかつて中西さんら香川県の球児たちがプレーした高松中央球場の跡地だ。今も当時のホームベースが残る情緒ある公園内にあるのが、高松市ゆかりの2人の名将、三原脩さんと水原茂さんの銅像。偉大な野球人を前に、改めて感じたことがある。
 それは先人たちの教えをいま一度、かみしめなければいけないということ。WBCでは、いろんな局面で中西さんから譲り受けた三原さんの「野球ノート」に助けられた。その奥深い教えに感謝し、同時に水原さんの言葉に思いをはせた。「人は弱いものである。だから形を重視すべし。例えばあいさつ、礼儀、服装…」。この言葉の意味に気付かなければ流れていってしまう。しっかり受け止めて残さないといけない。

 ずっと前に星野仙一さんから聞いたことがある。水原さんが中日の監督時代、遠征先の旅館で部屋に呼ばれたとき、旅館の浴衣は着ず自前のつむぎ姿で、いつもきちっとしていたそうで「凄く格好良かったんだよな」と話していた。私も水原さんが残したユニホームの着こなし方の挿絵を見たことがある。それらは自分本位な考えからではなく、どうしたら嫌な思いをさせないかという相手に対する礼儀だ。こうした考え方は、相手がどういうプレーをしようとしているかを知ることにもつながっていく。

 水原さんの言う「形」は、日本の野球が持っていたもので、あの時代に野球人が評価される歴史をつくったと思っている。主体性や自主性が重んじられる今の時代。押しつけにつながる「管理」「強制」といったものは受け入れづらい。でも、あいさつ、礼儀、服装などは相手を思いやることから始まる。だからこそ「形」は大切にしていきたいと思う。

 今こそ、先人たちの教えを忘れてはいけない。2人の名将の前に立ち、そう感じずにはいられなかった。(前侍ジャパン監督)

 ≪菊池寛像にお礼≫栗山氏は高松中央公園で高松市が生んだ文豪・菊池寛の銅像にも足を運んだ。優れた文化活動に贈られる今年度の菊池寛賞を受賞しており「受賞を報告し、お礼を言いたかった。この賞は三原さんも受賞して“一番欲しかった賞だった”と話していたと聞いた」。三原氏は大洋(現DeNA)を前年最下位からリーグ優勝、日本一へ導いた1960年(第9回)にプロ野球関係者で初めて受賞。尊敬してやまない三原氏に並ぶ受賞だけに喜びもひとしおだった。

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