イチロー先生 スタルヒン母校・旭川東の野球部臨時指導 壁越える思考説いた 窓ガラス破壊弾も披露

2023年11月07日 05:10

野球

イチロー先生 スタルヒン母校・旭川東の野球部臨時指導 壁越える思考説いた 窓ガラス破壊弾も披露
野球部員と課したノルマ(校舎の屋根越え5本)を達成し喜ぶイチローさん Photo By 代表撮影
 マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターのイチローさん(50)が5日まで2日間、北海道・旭川東の野球部を臨時指導した。22年夏の北北海道大会など、地方大会決勝に11度進みながら、甲子園出場は逃し続けた進学校。その壁を越えるべく、実演したフリー打撃では校舎を越える推定飛距離130メートルの特大弾を披露。自らを厳しく律するとともに、時には厳しく言い合うなど、なれ合いを脱することが壁を越えることに必要と説いた。
 期待する部員たちの声援とまなざしがイチローさんを乗せた。「期待しているよね?(窓が)割れるまで見たい?屋上5階?頑張るわ」。フリー打撃で快打を連発。右翼は95メートルで、高さ8メートルの防球ネットの先に4階建ての校舎がそびえる。初日は63スイングで、校舎を越えて中庭まで飛ばす推定飛距離130メートルの最長弾を放ち、屋上に3球乗せた。校舎直撃が5球あり、うち1球は窓ガラスを破壊。数学教室のものと聞き「数学の成績だけガーンと下がったらどうしよう」と苦笑いした。

 昨夏の北北海道大会で53年ぶりに決勝へ進みながら、11度目の敗退。届かない聖地への壁を前に、イチローさんへ救いの声を求めた。「全部決勝で負けてしまっている。でもね、実はそこで勝っていたら来てないです」。壁を越えるための「きっかけ」となるべく、熱血指導。高校生への指導は20年から4年連続で7校目。2日目もフリー打撃では91スイングし、屋上へ5球運び、右翼ファウルゾーンのマネジャー室の窓ガラスも破壊した。

 「人より頑張る必要はない。でも自分の中でその日の限界を迎えることは、自分で分かるよね。その日の限界を必ず迎えるということを今もやっている。だから去年よりもなぜか飛距離が上がっている。謎じゃない?」

 初日の練習を終えると漏らした。「仲良しすぎるかな」。2日間の練習で確認した。「厳しいことも言える雰囲気の方が強くなる。信頼関係が築けていたら言えるし、そういう関係が築けたらチームや組織は絶対強くなる」。時代が流れても、必要なもの。「それを遠慮してみんなとうまく仲良くやる、ではいずれ壁が来る」。自らを律して成長を止めないこと、そして周囲にも自身にも厳しく目を向け指摘し合い、同じ方向を向くことの大切さを伝えた。

 従来のサプライズではなく、事前に部員へ訪問を告知し、終始助言を求められていた。「過去の高校生と比べて断トツ。僕にとってもいい経験になった」。気温10度前後の寒空の下で、2日で計8時間指導。12度目の歓喜を約束し合い別れた。

 ≪臼井主将「思い出じゃなく、絶対に甲子園へ行くための2日間に」≫西中剛志監督は7学年上のスーパースターの指導に「あくまでも甲子園に出るために、僕らも選手も聞いたつもりです」と感謝した。「12度目の決勝戦のチャンスが来年になるよう、明日から頑張りたい」と視線を向けた。主将の臼井颯汰(2年)も「思い出じゃなく、絶対に甲子園へ行くための2日間にしようと言っていた」と強調。部員の大半は現役時代の活躍を生で見てはいないが「仲間への厳しさがチーム力を高めるために必要不可欠とイチローさんの口から聞けた。そういう方針でいきたい」と話に聞き入っていた。

 ▽旭川東 1903年(明36)創立の公立校。上川中、旭川中、旭川を経て、50年から現校名。北海道有数の公立進学校で、校訓は「生をよろこべ 矩(のり)にしたがえ 全力をつくせ」。野球部は創立と同時に創部し、22年夏の北北海道大会では53年ぶり11度目の決勝進出も準優勝で、春夏通じて甲子園出場なし。主な卒業生は元巨人・スタルヒン、陸上やり投げ・北口榛花ら。所在地は北海道旭川市6条通11丁目。郡司慶次校長。

 ◇ビクトル・スタルヒン 1916年5月1日生まれ、ロシア出身。ロシア革命で日本に亡命し、旭川中(現旭川東)在学中に全日本選抜入り。その後、巨人の母体となる大日本東京野球倶楽部に入団した。39年のシーズン42勝はプロ野球タイ記録。戦後にパシフィック・太陽、金星・大映、高橋・トンボと移籍し、55年に通算300勝。57年に自動車事故で死去した。通算303勝176敗、防御率2.09。通算83完封勝利はプロ野球記録。60年に野球殿堂入り。

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