メッツの最新鋭ピッチングラボ 「ピッチングは科学」 藤浪も恩恵を受けられるか

2024年03月08日 11:59

野球

メッツの最新鋭ピッチングラボ 「ピッチングは科学」 藤浪も恩恵を受けられるか
春季キャンプに臨むメッツのメンドーサ監督(「左端)ら(ロイター)
 ニューヨークポスト紙が23年6月フロリダ州にオープンした、メッツのピッチングラボについて特集している。
 元ドライブラインで、22年に球団に採用されたエリック・イエーガーズ氏がリーダー。この2年間テクノロジーに詳しい有能なスタッフを立て続けに採用している。

 23年シーズンが終了すると、10月2日、ドリュー・スミス、ブルックス・レイリー両投手がラボを訪れ、バイオメカニック(生体力学)のデータを取った。服を脱ぎ、身に着けているのは伸縮性のあるパンツ一丁。小さいモーションセンサーを体中に付け、その格好で投げる。これにより身体の細かい動きが詳細にわかる。選手は同じ動作をしているつもりでも、それぞれに身体の使い方が異なり、筋肉や関節を使った運動連鎖も様々。結果、投げ方も違ってくる。スミス投手の場合は、本人曰く「観覧車のような投球フォーム」で手も足もダイナミックな動き。グラブを持つ左手を高く上げたあと急激に沈ませ、同時に右手が巻きあがってボールを強く投げる。しかしながら23年はグラブの向きが高く上がるのではなく、打者に向かっていた。直球の球速が落ち、スライダーの曲がりが甘く、23年は防御率4・15と不調だった。スミスはラボの力を借りて、好調時のフォームに戻し、球速も変化球の切れも取り戻そうとした。

 近年のメッツはテクノロジーの分野で遅れを感じていた。以前はジェイコブ・デグロム、ザック・ウィーラーなどファブファイブと呼ばれた優れた生え抜きの投手達をファームで育て上げたが、近年は若手有望株をきちんと卒業させられていない。タイラー・メギル、デービッド・ピーターソンも伸び悩んでいる。今のMLBではピッチングは科学になっていて分析と実験の積み重ね。スティーブ・コーエンオーナーの資金援助で、イエーガーズ採用後、ラボも建設した。デビッド・スターンズ新編成本部長はブルワーズ時代からこういった施設を利用していた。「この10年間で、重要なテクノロジーの流入が進んだ。データのおかげで我々の指導はより明快で、選手に直接かつ迅速に意見や評価を伝えられる。投手のトレーニングの仕方から変わった。この施設はメッツの選手育成を担い、春季キャンプも行う場所に建てられた。集中管理をする場所に、たくさんのテクノロジーを装備できてとても助かる」と喜んでいる。

 今現在ヤンキース含め、MLB約10球団が独自のラボを持っている。ハイスピードカメラ、ラプソード、フォースプレート(投手がマウンドで投球板を蹴る時のインパクトを計測)などはどの球団も使っているが、メッツが他にどんな装備を持っていて、そこからどういった情報を得ているかは、極秘だそうだ。

 メッツはこの春のキャンプで全選手のデータを取っている。新加入の藤浪晋太郎についても、データを利用して、制球力など弱点克服に取り組んで行くのだろう。なぜ急にストライクが入らなくなるのか、身体のどの部分の動きがどう変わるのか?特定できれば、解決策も見つかるかもしれない。藤浪がそのポテンシャルを100%発揮できる手助けになる。もっとも選手によって、ピッチングラボへの関心度は異なるそうだ。信じる人もいれば、あまり信じない人もいる。スターンズ編成本部長は「データ収集は第一歩に過ぎない。次はそれを生かせるコーチを育てないといけない。データの意味を理解し正しく選手に伝えられる人材を増やす。これが次のステップ」と説明している。

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