【落合×鈴木啓示対談】西本幸雄監督の人心掌握術で届いた戦後生まれ唯一317勝「ありがたい」

2024年03月12日 17:10

野球

【落合×鈴木啓示対談】西本幸雄監督の人心掌握術で届いた戦後生まれ唯一317勝「ありがたい」
鈴木啓示氏(右)とオレ流チャンネル「博満の部屋」で対談した落合博満氏 Photo By スポニチ
 現役時代に3冠王を3度獲得し、監督としては中日を4度のリーグ優勝に導いた落合博満氏(70)が12日、自身のYouTube「落合博満のオレ流チャンネル」を更新。大好評対談企画「博満の部屋」の第6回目として、歴代4位の通算317勝を挙げた元近鉄投手・鈴木啓示氏(76=本紙評論家)をゲストに招いて対談を行った。
 鈴木氏は1984年5月5日の日本ハム戦(藤井寺)で300勝を達成。戦後生まれでは唯一の300勝投手だ。「西本さんは監督を辞めていて(300勝達成の試合を)テレビを見てたんやて。藤井寺で日本ハムとデーゲームやった。それを西本さんが見とってね、その時のアナウンサーがこのまま勝てば、藤井寺の一塁側ベンチの裏の食堂で簡単な300勝のお祝いパーティーをするらしいと言うたらしいわ。西本さんは家で寝転がって見とったらしい。そんなことやるんやったら俺が行ったらないかんと自分の車を運転してわざわざ藤井寺まで来てくれはった。監督きていただいたんですかって言ったら“これで終わりちゃうで。これからあとなんぼ勝つかがお前の値打ちになるからな”って言われた」と明かした。

 当時、鈴木氏は「300勝した時点でこれでええわって思ったんや」と明かした。しかし、西本監督の言葉に奮起し「ところが、まだやらないかんのかというくらいの気持ちになって、あと17(勝)積み上げたのも西本さんのおかげやったなと思ってね。あの時点で“そうやな、辞め”って言われとったらその時点で辞めとったわな」と懐かしそうに振り返った。

 西本監督は鈴木氏の表情を読み取り「お前の目を見たら辞めたそうな顔してない。俺に同情求めにきとるな」と言われたという。さらに「選手の前でお前に名指しで怒って悪かったな。お前を怒っておいたら他の選手に示しがついたんや」と普段言われなかったことも言われたという。すると、落合氏も「よく監督ってその手使いますよね」と指揮官の心情をくみ取った。

 西本監督就任前までは首脳陣から怒られることも少なかった。しかし、西本監督就任後は状況が一変。鈴木氏は「西本さんがいきなり“スズ、こうやぞ”って。他の選手は“鈴木さんがあんな怒られてるやんか。わしらもっと頑張らんとあかんな”という気持ちにさせることがワシの狙いやったって言うわけ」と西本監督から説明されたという。

 現役生活を振り返り「そないしてもらったおかげで、私もまたよし、見とれという気持ちになれた。20年間やりましたけど、満足した年が1年もなかったね」という。鈴木氏は活躍するも、チーム成績は低迷。一方で優勝した年は満足のいく成績を残せなかった。「MVPの賞は誰か言ったら、阪急が強かったから足立(光宏)さんとか山田(久志)君とかね。17勝くらいのピッチャーがMVPなんねん。優勝チームやからね。で、チーム(近鉄)が良かったら俺が12、13勝しかできへん。何の役にも立ってない。チームも俺もよかったという満足したシーズンがいつもない」と振り返った。

 「俺みたいな単純な人間は満足したら調子に乗るから俺は成長なかった。だから、満足できなかった年ばっかりやったから“この野郎、この野郎。来年見とれ”というシーズンオフの過ごし方で自分が何とかやれたんちゃうかなという気がするわね。そういう性格まで西本さんがようつかんでくれてはったなと思ってね。西本さんに育ててもらい、やる気を出させてもらったという人生でしたね。ありがたいね」と恩人に感謝した。

おすすめテーマ

2024年03月12日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム