「セクシー田中さん」 元漫画編集者が原作者の無念代弁「“恋愛ヤッホー”にするわけにはいかないと」

2024年02月13日 17:14

芸能

「セクシー田中さん」 元漫画編集者が原作者の無念代弁「“恋愛ヤッホー”にするわけにはいかないと」
「セクシー田中さん」第1巻 書影
 関大の深澤真紀特任教授が13日、文化放送「大竹まこと ゴールデンラジオ!」(月~金曜後1・00)に生出演し、昨年10月期に日本テレビでドラマ化された漫画「セクシー田中さん」の芦原妃名子さん(享年50)が急死したことでクローズアップされた、漫画の映像化問題について自身の考えを示した。
 かつて漫画の編集者だった深澤氏は、同作を含めて芦原さんの代表作をすべて読んでいるという。芦原さんの訃報に「本当に残念でならない」と追悼の言葉を口にした。その上で、「SNSの炎上とか、誹謗中傷の問題も大きいですが、原作を改編していいかが語られすぎて、今回の件はそれが問題ではないというお話をしたい」と問題提起。「芦原さんは『セクシー田中さん』という作品の何を守りたかったのか、あまり語られていない。皆さん、原作も読んでいなければ、ドラマも見ていないで語っている方が残念ながら多くて」と続けた。

 芦原さんの作風について、深澤氏は「業界では評価されている漫画家の1人。すごく丁寧で、すごく誠実な、すごく難しいテーマを描かれている漫画家の1人なんです」と説明。同作について、「一見、タイトルはふざけてる。しかも、ラブコメだと思われているかもしれないけど、とにかく自己肯定感の低い人に寄り添う作品なんです」とした。

 友達も恋人もいない地味な会社員の田中さんが、実はセクシーなベリーダンサーという裏の顔を持つという設定。田中さんの生き方に周囲が共感し、影響を与えていく様子も描かれ、年の離れた派遣OLの朱里とは友情関係も生まれていく。深澤氏は「すごく丁寧な漫画で、全然恋愛が重要なテーマではなくて、女性も男性も田中さんがベリーダンスに出合ったことで巻き込まれていって、どんどん自分を取り戻していくという、すごくいいお話なんです」と熱弁した。

 芦原さんは生前にしたためたブログ(後に削除)で、「性被害未遂・アフターピル・男性の生きづらさ・小西と進吾の長い対話等、私が漫画『セクシー田中さん』という作品の核として大切に描いたシーンは、大幅にカットされ、まともに描かれておらず、その理由を伺っても、納得のいくお返事はいただけない」などと、ドラマ化への苦悩をつづっていた。

 これについて、深澤氏は「ラブコメの姿をしているけど、主人公たちがいろんなことに巻き込まれていて、そのテーマを描いている。でもドラマはたぶん、めんどくさいとか、役者に説明できないとか、スポンサーがめんどくさいとかあるのかもしれないけど、面倒なテーマを避けていて」と推測。「芦原さんとしては、そもそも王道の恋愛ドラマではないし、そういう性とか愛に対するトラブルについて向き合っているものなのに、ドラマ側が向き合っていないということで、不信感が生まれてきた」と問題を指摘した。

 芦原さんは脚本を巡り、局側と折り合いがつかず、自らが9、10話の脚本を書くことになった経緯を説明していた。深澤氏は「“視聴者の皆さんにはがっかりさせたかもしれなかったので、申し訳ありませんでした”という、批判したいというよりは自分が脚本を書く経緯と、それがうまくいなかったかもしれないということを謝られたブログでした」と、芦原さんの投稿を解説。「しかも“何度も何度も自分がドラマにあれこれ言うのはうざかったと思います。失礼な条件であることは理解しています”ということを、何度も書いてらっしゃる。そこまでしても、芦原さんはセクシーという作品、田中さんだったり朱里だったり(を守りたかった)」と、意図を推測した。

 人物像から自己肯定感、社会問題まで、芦原さんが丁寧に描いた世界観。深澤氏は「本当に人気ある漫画でしたから、田中さんや朱里に思い入れのある読者がいる中、ありがちな“恋愛ヤッホー”みたいなドラマにするわけにはいかないと強く思われたわけですね」とし、「そのドラマ化に当たって、出版社なりテレビ局なりという組織が、芦原さんの真剣な意図を漫画の主人公も、読者も守りたいという意図を理解できていたのか」と、疑問を投げかけていた。

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