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【内田雅也の追球】不運と嘆かず、前を向く。回の先頭打者が6度出塁も…三振では何も起きない

2023年07月14日 08:00

野球

【内田雅也の追球】不運と嘆かず、前を向く。回の先頭打者が6度出塁も…三振では何も起きない
<神・D>4回、見逃し三振に倒れた大山(撮影・成瀬 徹) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神0―4DeNA ( 2023年7月13日    甲子園 )】 スコアで安打をつける時、ふらっと上がった打球が野手の間や横にポテンと落ちると「T」の文字を添える。小学5年時、初めて手にしたSO社のスコアブックにあった書き方だ。
 テキサス安打の頭文字だ。テキサスリーガーズヒットである。1889年、マイナーリーグ・トレドの左打者アーサー・サンデーがこの手の安打を量産、・389の高打率をあげた。出身が今の2A級テキサスリーグだったため語源となった。

 6回7安打3失点で敗戦投手となった阪神・村上頌樹はこのT付き安打が4本もあった。痛かったのは5回表1死二、三塁での投手・石田健大の中前2点打と6回表2死一、三塁での京田陽太に浴びた中前適時打だ。

 ともに左打者の内角直球だったが、詰まりながらも運ばれた。クオリティースタート(QS=6回以上、自責点3以下)は達成した。これでタフ・ロス(QS達成での敗戦投手)は4度目だ。

 夕方の豪雨で試合開始が39分遅れ、球場内に流れていた柳ジョージ&レイニーウッドの『雨に泣いてる…』を思う。

 むろん問題は打線である。回の先頭打者が6度も出塁しながら零敗を喫した。いらいらが募る雨上がりの敗戦だった。

 特に無死二塁(一、二塁を含む)が4度もありながら、走者を三塁に進められなかった。順に書けば▽1回裏・中野拓夢投ゴロ▽4回裏・大山悠輔見逃し三振▽6回裏・ヨハン・ミエセス空振り三振▽7回裏・前川右京空振り三振。進塁打を打とうとしていたのは中野で、左腕の外角球を引っ張ろうとしていた。

 監督・岡田彰布の「打て」は小細工なしの「打て」だ。それでも三振では何も起きない。

 もう一つ。佐藤輝明の不振は重症だ。不調の打者の打順を下げても好機に回ってくる、というのは、ほぼ定説と言える。ブレーキとなった。

 ボール球を振り、ストライクは見逃す。ストライクゾーンが揺らいでいる。6回裏三振の2ストライク目、外角直球を見逃した時、首をかしげたのはいけない。選球眼は目の問題よりも打撃姿勢が崩れているのだろう。

 8回裏の1本が早い回に出ていれば……と不運を嘆いてはいけない。川上哲治が<運とは自分で運ぶもの。真剣にやれば幸運を呼ぶ>と著書『遺言』(文春文庫)に書いている。首をかしげず、前を向きたい。=敬称略=(編集委員)

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