アルバイトをしながら白球を追う意義 中京学院大・近藤監督が労働を通して伝えたい「心」とは

2023年07月22日 15:05

野球

アルバイトをしながら白球を追う意義 中京学院大・近藤監督が労働を通して伝えたい「心」とは
プロ注目のパワーピッチャー赤塚(左から4人目)と並んでポーズをとる中京学院大の4年生部員(撮影・長嶋 久樹)                            Photo By スポニチ
 2016年の全日本大学野球選手権で初出場初優勝した中京学院大では、アルバイトが奨励されている。許可、とは違う。近藤正監督(76)の方針として、学生が自由に働ける環境が整えられているのだ。今もプロの一線で活躍する菊池涼介内野手(広島)、初優勝時の主力だった吉川尚輝内野手(巨人)らOBも、二足のワラジを履いて、野球の腕を磨いてきた。
 全国から有望な選手が集う強豪校にもかかわらず、アルバイトのシフトを優先するため、温暖な地へ遠征するキャンプはなし。普段の練習中も、「勤務時間」の関係で、「お先に失礼します」とグラウンドを後にする選手だっている。「アルバイトしながら野球ができるので、うちを選んでくれる子も多い。高校まで親のスネをかじってきたんだから、大学くらいは自分で働いて稼がないと…」。孫のような選手を見つめる近藤監督の柔和な顔が少し緩んだ。

 母校の中京商(現中京)を5度、甲子園へ導き、2006年から率いる中京学院大も全国の頂点に立たせた名将。ただ、決して野球を教えるだけの指導者ではない。「実社会で働くことで、大学の授業で教えてくれないことが学べて、いろんなルールを学んだり、大人と触れ合うこともできる。それから、お金を稼ぐ大変さも分かるし、親がどんなに苦労して、自分を育ててくれたかも理解できる。あと、自分で汗水流して買った道具は、みんな本当に大事にしている。そういう心を養うのも大事なんですね」

 プロ注目の153キロ右腕、赤塚健利(4年)も、中津川市内の回転寿司チェーン店で週に2、3度、ホール係としてシフトに入っている。「一般社会を経験することで、野球だけでなく、社会に出た時でもちゃんと対応できる一つの機会と捉えて、アルバイトしています。自分で働くことで、高校の時よりも、親のありがたみが増したような気がします」。近藤監督の思いは、ナインの心にも確実に浸透している。教室やグラウンドには存在しない「教育」がそこにあった。

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