【内田雅也の追球】13年ぶりに訪れた宮崎で思い描く阪神黄金時代 岡田監督の信念は揺るがない

2023年10月14日 08:00

野球

【内田雅也の追球】13年ぶりに訪れた宮崎で思い描く阪神黄金時代 岡田監督の信念は揺るがない
宮崎に到着した岡田監督(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 宮崎ブーゲンビリア空港に降りると、小雨が降っていた。阪神監督・岡田彰布は「雨やなあ」と苦い顔になった。
 クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージに向けての実戦調整で阪神の主力打者も宮崎に入った。9日から投手陣や若手が出場していた、みやざきフェニックス・リーグに合流する。

 阪神は宮崎にはあまり縁がない。球団史上、公式戦はもちろんオープン戦も行ったことがない。

 岡田はオリックス監督時代の2010年10月以来13年ぶりだという。当時韓国・ハンファ総合コーチでフェニックス・リーグに参加していた高代延博(現大経大監督)をヘッドコーチとして招くため宮崎市内で接触した。

 その前は09年2月だった。阪神監督を退任した翌年で評論家としてワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や巨人キャンプを視察した。

 巨人球団代表だった清武英利から「ぜひとも話を聞かせてほしい」と頼まれ、球団ブース内で会談した。目の前で始まった巨人紅白戦が6回まで進んでいた。2時間ほど2人だけで話した。

 <たいしたもんやと思ったよ>と著書『オリの中の虎』(ベースボール・マガジン社新書)に記している。<阪神の監督を辞めたばかりの人間をこうして丁重に迎えて話を聞くという、その姿勢がすごいと思う。阪神のフロントにそんな人間おるか>。

 主なテーマは育成と勝利だった。両立が難しいという清武に岡田は「同じすよ」と答えている。「選手が育たないのでFAや外国人で補強をしている」との話には「逆でしょう。そんなに獲ってふたをするから若手が出てこられないんですよ」と持論を展開した。

 清武は当時「育成の巨人」を掲げ、育成選手を多く保有しての3軍構想を進めていた。著書『「巨人軍改革」戦記』(新潮社)で岡田と会談した内容を<岡田監督は少数精鋭主義を採った>と記している。「何より我慢が必要」「コーチは何もするなと言ってきた」と岡田の言葉がある。

 あの清武との会談は思い出深いそうだ。時代は巡り、いま再び似たような状況にある。若手が育って優勝した阪神と苦労している巨人。自前で育てるという岡田の信念は揺るぎない。今回の優勝を機にさらに若手を育てる。「ウチはまだまだ強くなるで」と黄金時代を描く。宮崎はそんな土地である。 =敬称略=
 (編集委員)

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