【内田雅也の追球】「カット」での進塁阻止

2024年02月18日 08:00

野球

【内田雅也の追球】「カット」での進塁阻止
<練習試合 神・楽>2回、石原の右前打を中継の大山へ返球する森下(撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【練習試合   阪神4―3楽天 ( 2024年2月17日    宜野座 )】 シートノックを始める時、ノッカーのコーチから聞いた数字を捕手が全選手に伝える。最初に打つ外野ノックの本数である。
 阪神にとって今キャンプ初の対外試合、練習試合・楽天戦(宜野座)だった。捕手の声は「イチ、イチ、ニィ!」。二塁送球が1本、三塁送球が1本、本塁送球が2本という意味である。

 阪神の送球はおなじみの「全球カット」だ。外野手はどの塁への送球でも内野手のカットマンに低く、強い送球を繰り返す。打者走者を含めた後ろの走者に余計な進塁を与えないという監督・岡田彰布の方針である。

 外野手は8人で各4本。数えてみると、計33本中32本がカットへの送球だった。残る1本は福島圭音の本塁送球が高かったためで、やり直しでカットへ送球していた。

 相手の楽天も「イチ、イチ、ニィ!」だった。外野手は6人で各4本。やり直しはなく24本あった。うちカットしたのは13本、各塁への直接送球が11本だった。ただ、左右にそれた送球が数本あったのは確かだ。

 両チームとも最後の1本は外野手が前進チャージし、二塁から本塁突入する走者を刺す送球を目指している。本塁上「間一髪」を想定しているが実際はそんなクロスプレーはなかなかない。

 そんな現実が試合でも現れた。阪神2回表の守り。2死二塁から右前へライナー性ワンバウンドの安打が飛んだ。右翼手・森下翔太の打球処理は速く、二塁走者・辰己涼介は本塁突入を自重した。森下は素早く低く、カットマンの大山悠輔に返球していた。打者走者も進塁はできなかった。

 一方、攻撃では4回裏1死一、二塁で佐藤輝明が三遊間をゴロで破る左前打を放った。二塁走者・森下はスタートよく悠々本塁に還った。やはり間一髪の打球はめったにない。ならば「全球カット」で進塁を阻止する姿勢こそ意味を持つ。

 岡田がたたえたのは9回表、1点差と迫られた2死一塁で右中間寄り安打を素早く追いつき、カットに返球した福島の守備だった。打者走者に二塁を与えず「1点差で二、三塁と一、三塁ではえらい違い。打者を一塁で止めたのは大きいよ」。

 試合前ノックでやり直しをするほど「全球カット」を徹底する効果だ。速く、低い送球で余分な進塁を与えなかった。

 試合は守り勝ちで、その一端が「カット」に見えた。 =敬称略= (編集委員)

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