【内田雅也の追球】数々の「事件」招いた過度な警戒 村上は昨季の大胆さを忘れずにいきたい

2024年04月03日 08:00

野球

【内田雅也の追球】数々の「事件」招いた過度な警戒 村上は昨季の大胆さを忘れずにいきたい
<神・D>初回無死、度会(手前)に四球を与えて顔をしかめる阪神・村上(撮影・北條 貴史) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神3ー5DeNA ( 2024年4月2日    京セラD )】 阪神・村上頌樹が初回に4点も失うのは“事件”である。何しろ、昨季レギュラーシーズン先発21試合で初回失点は皆無だった。
 もちろん1死一、三塁からの三ゴロを佐藤輝明が弾いたのは痛恨の失策で、普通にさばいていれば5―4―3併殺、無失点でしのいでいた。

 ただし、不調には違いなかった。昨季は最優秀防御率、最優秀選手(MVP)に加え、新人王でもあった。つまり、一昨年までは1軍登板2試合の投手で実績はほとんどない。今季初登板の緊張も重圧もあったろう。

 いや、それ以上に開幕3連戦で好調、積極的に打ちにくるDeNA打線に慎重に過ぎ、力んでいたのではないだろうか。

 それは初回先頭、度会隆輝への四球に表れていた。村上の初回先頭四球など見たことがない。これも“事件”だった。

 度会はセ・リーグ史上初、新人で開幕から2試合連続本塁打を放ち、3連戦で13打数5安打(打率3割8分5厘)と好調だった。派手な言動や立ち居振る舞いもよく目立ち、チームを乗せるタイプの1番打者だった。

 当然、阪神の先乗りスコアラーも十分にチェックしていた。得意・不得意の球種、コースなど偵察した内容を伝えていたことだろう。ただし過度の警戒は逆効果になる。

 監督・岡田彰布から聞いた、オリックス監督時代の話を思い出す。ミーティングでスコアラーが好調な打者について「ここはダメ」「ここは気をつけて」と警戒を呼びかけていた。岡田は「そんなに警戒ばかりしていたら投げる球がなくなる」と話を止めた。「細かすぎず、大ざっぱでもいい。投手に投げやすく伝えることも大切だ」

 初回先頭、村上は度会に対し、初球こそ外角直球でストライクを奪ったが、以後は速球、フォーク、ツーシームと4球とも低めに外れた。「高めは禁物」と指示があったのだろう。確かに度会が放ったプロ1号は高めボール気味を運んだ一撃だった。「低く低く」の意識が過ぎれば球威が落ち、制球も狂う。四球という“事件”が4失点の“事件”を招いていた。

 大胆さを忘れずにいきたい。8回表、同じ度会に19歳の門別啓人が真っ向勝負を挑んでいた。直球とスライダー、4球ともストライクだった。最後は直球で空振り三振に取った。村上が昨季よく見せてくれた大胆な投球だった。思い出しただろう。要は、大胆かつ細心である。 =敬称略=
 (編集委員)

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