【内田雅也の追球】殊勲の併殺打と四球

2024年05月01日 08:00

野球

【内田雅也の追球】殊勲の併殺打と四球
<広・神>4回無死満塁、坂本(右)は二ゴロ併殺打に倒れるも勝ち越し点が入った。左奥はベンチの岡田監督(撮影・平嶋 理子) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神7―1広島 ( 2024年4月30日    マツダ )】 何度か書いてきたことだが、無死満塁での併殺打(三塁走者生還)を阪神監督・岡田彰布は良しとしている。
 統計上、無死満塁での得点確率は8割を超え、得点期待値(平均得点)も2点以上ある。それでも無得点で終わる可能性もあるわけだ。

 最悪は三振や凡飛で、1点も入らない可能性が出てくる。最悪を避けたという意味で併殺打を評価する。いかにも「マイナス思考」を自認する岡田らしい考え方である。

 この夜の勝ち越し決勝点は4回表、無死満塁での坂本誠志郎二ゴロ併殺打で拾ったものだった。

 試合後、岡田は案の定「あれでええんよ」と言った。「三振はあかん。1点でええんよ」

 坂本は床田寛樹にカウント1ボール―2ストライクと追い込まれながら、外角ツーシームにゴロを転がした。三振や凡飛を避けるコンパクトなスイングだった。岡田の考えが浸透している。

 最終スコアは7―1の楽勝だったが、勝ち越し点が入ったおかげで、その後の展開も楽になる。2点目がなければ、3点目以降もないのである。

 また、床田から得点した2、4、6回表はいずれも四球の走者が足場となり、生還を果たした。

 4、6回表は先頭で大山悠輔が出た。昨季リーグ最多四球の大山は今季12、13個目。6回表はカウント1―2から際どい球を3球見極めた。

 2回表は1死からシェルドン・ノイジーが出た。この時は0―2から4球連続で誘い球にのらず、辛抱していた。

 4安打で規定打席不足ながら打率も3割に乗った。4回表の打席では球審の判定に不満な態度を見せたが、選球眼に自信がついてきたのだろう。

 ボール球を見送り、カウントを整え、四球を選ぶ能力はプレート・ディシプリン(打席自制心)と呼ばれる。一つの指標にBB/K(四球数÷三振数)がある。ノイジーは大リーグ時代、通算25四球、125三振で0・20と相当に低い数値だった。昨季も36四球、85三振で0・42。だが今季は四球11個を数え、三振も7個と少ない。1・57と驚くほど改善した。

 岡田は「ほんまボール球振らんようになった。監督賞やったからか」と笑った。24日のDeNA戦(横浜)で決勝の押し出し四球を選んでいた。

 優勝した昨季同様、四球が足場となり、つなぎとなる。特徴が表に出てきた。 =敬称略= (編集委員)

おすすめテーマ

2024年05月01日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム