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【大学選手権】真鍋の「H」伊藤樹の「K」を刻む学生記録員たち エキスパートが「公式記録のコツ」託す

2024年06月10日 13:39

野球

【大学選手権】真鍋の「H」伊藤樹の「K」を刻む学生記録員たち エキスパートが「公式記録のコツ」託す
開幕戦を終えた記録員にアドバイスする日本野球協議会オペレーション委員会記録部会の山川誠二氏(左) Photo By スポニチ
 春の大学野球No.1を決める全日本大学野球選手権が10日、神宮と東京ドームで開幕した。大会の公式記録員は全国の連盟から野球部マネジャーなどが派遣され、熱戦の中で安打の「H」や失策の「E」を判断し、スコアを刻んでいく。8日には日本野球協議会オペレーション委員会記録部会の山川誠二氏(58)を講師に招き、スキルアップを目指す「公式記録講習会」を実施。「野球スコアのつけ方 完全マニュアル」(ベースボール・マガジン社)の監修を務めるなど、記録のエキスパートと知られる山川氏に記録員としての心構えなどを聞いた。(聞き手 アマチュア野球担当キャップ・柳内 遼平)
 ――今大会は全国から集った学生たちが記録員を担当。8日の「講習会」で教えたことは。
 「公認野球規則の9.00には記録に関する規則があります。記録員はそこに則り正しく記録をつけることが仕事。今回の研修ではスコアの基本的な書き方は習得している前提で、難度の高い勝ち投手の決定方法、自責点の計算方法を中心に教えました。記録の考え方を共有して実践してもらう。各県で解釈、記録のつけ方に違いもあるので、統一した考え方で記録員を担当できるように共有しています」

―勝ち投手の決定、自責点の計算方法は難しい。
 「難しいです。勝ち投手、自責点は特に難しいところなんですけど、深く教わることができる場ってあまりないんです。規則書に記載されているけど、実際に起きるケースの中で具体的に説明を受ける場はあまりないので、今回のような場で勉強してもらいたい。先発投手だったら5回を投げて、かつ自チームが勝っているという基本的なことはみんなが知っている。先発投手に勝ちがつかないケースは判断が難しい状況もあるので、具体例を出して説明しました」

 ――プロ野球では記録員として約1430試合を経験。一番難しいところは。
 「やっぱりヒット、エラーのジャッジ。言葉で説明するのは難しいんですけど、あまり考えすぎないで見ることが大事。意識しているのは俯瞰(ふかん)、第三者の目。“自分が判断しなきゃいけない”や“一生懸命ジャッジするぞ”と集中しすぎると逆に見えなくなるもんです。あまり固くならず、ちょっと引いた感じでリラックスして見ることを心がけています」

 ――大学No.1を決める大会で学生たちが公式記録員を担当するのは意義深いこと。
 「本当にいいことですよね。学生のプレーを学生が記録をつけていく。なおかつ考えが共有されて全国のリーグにノウハウが生かされていく。記録の考えた方を広めてもらうことができるし、これから社会人野球、独立リーグなどで記録員を続ける人のためにもなる。今回配布したテキストは当大会だけではなく、どこの試合でも活用できる。記録員の育成という点において、大会前に研修ができることは本当にありがたいことです」

 ――開幕戦では記録席の横から見守ったいた。
 「今日は“実戦でどうなるのかな”と視察に来ました。開幕戦では先制点の場面、併殺のケースで三塁ランナーが生還したんですけど、しっかりと“打点なし”と記録できていました。その後の走塁妨害や失策などのケースも理解した上で判断できていました。もっと良くなるためのキーワードは「目線」。投手が投げたらすぐ下を向いてスコアを書くのではなく、プレーが落ち着いてから書くということが大事。捕手が投球を取ってからプレーが起こる可能性もある。記録員として“すぐに書きたい”という思いは凄く分かるんですけど、捕手からのけん制だったり、塁での隠し球だったり、プレーはいつ起こるか分からないので目を離さないことが大事。開幕戦では学生2人で記録を担当していて、声をかけながら確認していた。凄くいいことだなと思いましたね」

 ――今大会、学生記録員に期待することは。
 「グラウンドに立つ審判員と一緒ですね。何もトラブルが起こらず無事に試合が終わることを願っています」


 ◇山川 誠二(やまかわ・せいじ)1965年(昭40)6月16日生まれ、長野県伊那市出身の58歳。伊那北(長野)では捕手としてプレーし、ベンチ入りした1年秋には北信越大会4強入り。日大卒業後にパ・リーグの記録部に入局。記録員として巨人・杉内のノーヒットノーランなどを担当する。現NPB記録部長。趣味は伊坂幸太郎書籍の読書。好きな言葉は「泰然自若」。

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