【王将戦】藤井聡太王将が3連勝 タイトル防衛王手 自身2度目のタイトル戦2桁連勝も「反省の残る対局」
2024年01月29日 05:00
芸能
珍しい失着だった。終局後「(8七の)と金を払われる順をうっかりしていた。まずくした」と告白した。休憩前後を挟む51分で△7五歩としたが、△8六との方が良かったという。自陣から4手を費やしてと金に昇格させたのに、対価なく失った。「いくつか読みの甘いところがあった。反省の残る対局だった」。開幕3連勝の高揚感はない。優勢を意識したのは74手目△6三同竜(第1図)まで進んでからだった。
それでも逆転までは許さないのが8冠の底力だろう。第3局の立会人は、前期第5局でも務めた福崎文吾九段。羽生善治九段が通算100期を目指して挑戦した前期。2勝2敗で迎えたさんべ荘対局で、藤井が羽生の得意戦法、後手横歩取りを打ち破って連覇へ王手をかけ、続く第6局での後手番からのブレークへつなげた。今回も藤井が制して3連覇へ王手。「オーラが菅井さんを惑わせた」と福崎は指摘した。
藤井が歩を垂らした64手目△5六歩。と金にできれば菅井陣の中央へ攻めの拠点を築くことができる。菅井の応手としては駒台から角を放っての攻め合いがあったが、実際は▲5三歩成。攻めの拠点を放棄して二歩を回避し、と金をつくらせない安全策▲5八歩が象徴的だった。
「菅井さんは“耐え難きを耐え”。藤井さんは、一流棋士の脳波を狂わすオーラがあります」と福崎。8冠のブランド力が指し手に宿る。昨秋、永瀬拓矢王座から最後の1冠を奪い史上初の8冠独占を果たした王座戦も藤井の逆転劇が相次いだ。
その王座戦以来のタイトル戦連勝を自身2度目の2桁へ伸ばした。さらに菅井が繰り出した16局目で初の戦型、向かい飛車を破り、対戦成績を12勝4敗(4千日手)へ伸ばした。そして1966年の大山と並ぶタイトル戦19連覇の更新へ58年ぶりに王手をかけた。
勝って改善を求める姿に、死角は見当たらない。