【王将戦】追い込まれた菅井竜也八段 攻めの姿勢も「1日目の失敗」挽回できず「諦めず頑張りたい」
2024年01月29日 05:00
芸能
「1日目から失敗したというか…自分の考えに甘いところがあって、形勢を損ねる将棋になってしまった。ちょっと自分のふがいなさを感じています」。対局直後、約150人のファンで埋まった大盤解説場への移動中は頭を抱え、足取りは巨象のように重かった。ショックの大きさを如実に物語る。
対藤井で初めて見せた向かい飛車は「ずっと同じ戦型(三間飛車)が続いたので、ちょっと違うことをやってみよう」という意図から採用したという。目先を変えた序盤戦は、確かに8冠王者を戸惑わせた。
対抗型での戦いは他の誰と比べても一日の長がある。豊富な経験を背景に軽やかな指し手を進めたが、31手目に▲6六角と合わせ、2度目の角交換を行った後の35手目▲7八飛に代えて「普通は5八金(左)と上がるべきだった。一番普通に指すのが一番良かった」と痛恨の選択ミスを猛省する。
これが「1日目の失敗」。以降は「攻めるしかなくなっているので、しっかり受けられると負けになる将棋」に追い込まれた。息苦しさを感じながらも55手目には正立会の福崎九段が「鬼手」と評した▲5六角(第2図)の勝負手を放ったが、正着の応手△7五歩を冷静に打たれて万策尽きた。普通の相手なら別の一局になっていた可能性もある。だが盤を挟むのは天下無双の絶対的王者。第1日に着手したわずかなほころびを見逃してくれるはずはない。
後がない状況で迎える第4局へ「スコア的にかなり厳しいですが、最後まで諦めず頑張りたい」と必死さを示す菅井に、失うものは何もない。地面にはいつくばりながら食らいついていくしかない。