【Vインタビュー 今岡打撃コーチ(3)】「僕は教え魔なんでね」それでも選手の個性を尊重する理由は

2023年09月15日 12:00

野球

【Vインタビュー 今岡打撃コーチ(3)】「僕は教え魔なんでね」それでも選手の個性を尊重する理由は
阪神・今岡打撃コーチ Photo By スポニチ
 阪神・今岡打撃コーチが振り返る今季の18年ぶりの優勝。全3回の第3回は岡田監督との関係性、選手との接し方など、今岡流を解説した。
 ◆  ◆  ◆

 ――05年は岡田監督と選手として信頼があって、今年は監督とコーチとなり、関係性は変わった。
 「コーチのボクが今、監督とどういう関係かなんて一切気にしたことないです。だってボクらの仕事は選手を見ること。選手が何か変えたら気付く。何か言ってきたら、どう答えようかと思って、毎日練習と試合を見ている。表現は悪いけど、コーチが監督を見るなんて、おかしいでしょ。それは岡田監督がコーチをどう思うかであって、コーチの僕は選手を見るのが仕事なので」

 ――今岡コーチがグラウンドで選手を指導しているのを見たことがないが、話をするのはどういう時。
 「基本的に、選手が聞いてきたらね。僕は教え魔なんでね。ずっとしゃべってます、聞いてきたら。僕が現役のときも、聞いていないのに…というのがあった。悪いわけではなく、そのコーチのスタンスなので。間違ってほしくないけど、僕もすごい教えたいですよ。でもみんな自分の理論を持っているので。なぜ言わないかというのは、全員に当てはまらないからです。監督がオーダーを組んで、打線としてやってほしいことは誰が言っても一緒。こういうときは強引に、こういうときは見てくれよ、こういうときは3球目ぐらいまで待ってくれよというのはあります。でも脇を締めなさい開けなさい、グリップ上にしなさい下げなさいを言い出したら、そういうのは全員違うので」

 ――聞きに来たら答えるけど、聞きに来るまでは。
 「間違いなく選手は聞きに来ます。でも毎日毎日教えてる人も間違いではない。僕のスタンスがそうだということ。聞きに来たら教える、そのために見ている。ゲーム中に不意に選手からボクが思ってることと違うこと聞かれて、『えっ!?』って3秒くらい止まるときはあるけど、聞かれたことをパッと瞬時に答えられないことは、指導できてないってことだと思う。だってレギュラーで毎日出てたら考えてるでしょ。それを考えなさいと選手に言うのは失礼。例えばボール球を振るなという一つをとっても、これもスコアラーさんと我々の共同作業でしょ。傾向と対策の中で、だいたいどの投手も低めのボールを我慢できたら、というミーティングなんですけど。スコアラーさんが言う傾向と対策を選手が耳に入れていることは大事で、なくてはならないけど、ゲーム始まったときにこちらの立場が『何で振るねん。振るなって言うたやろ』というのは、コレは邪魔。近本が全部強引にいっていいとき、そういう目でみてたら、手に取るように分かるから。関係の無いときにわざとボール球を振る。ファーストストライクを見る中野も大山もそう。打席の途中で四球狙いにいったとなったら、必ず選ぶ。自分の意識でそうやってやってくれたら、ボール球を振らないことを意識してても、自分の反応に邪魔にならない。選手だって分かっている。僕のスタンスは言わない。でも言う人も間違いではない」

 ――自身の現役時代に、そういう指導者に恵まれた。
 「スコアラーさんに、たとえば『このピッチャーはカウント1―2からはスライダーが8割ですよ』と言われたら、スライダー狙わなあかんと思うでしょ。でもボクは、じゃあスライダー見逃せばいいというタイプ。みんな打つ方に考えるでしょ。8割狙いなさいというのが我々の仕事だったらウソ。スライダーにタイミング合わないなら、打ちにいったらダメ。選手の時もずっとそういうことを考えてた。打ちに行ったってタイミング合わないなら、なんで打ちにいかないとダメなんですかというのが選手の意見。ただ、傾向と対策はいる。それを近本、中野、大山がめちゃ見てる。中野は2番になってから、必ずファーストストライクを打たない。近本は打席に立っている間にカウントしだいで四球を取りに行く。もうちょっと打ちに行ったら打率は上がるかもしれないけど、見逃す。カウント3―1でも、後ろにつないだ方がいいときは見逃していますね」

 ――中野がファーストストライクを振らなくなったのは指示はなく、自分で考えて
 「何が言いたいかと言うと、彼の場合は状況じゃない、2番だから打たない。近本、大山は状況を見て、打つ打たない、ということです。阪神の選手は、追い込まれるまでは基本的に何も気にしなくていいといったら、ボール球振って、振って振ってタイミング合わせていくタイプが多いと思う。近本だって中野だって大山だって多分そう。でもそれを、打線としてちゃんとしようぜって言ったとき、今年こうなってます。他のチームよりそういうことができているから。全員が3割打者で、全員が20本塁打していたら、語ることもないでしょ」

 ――ワンチャンスで追い付く、勝ち越すのが今季の強さ
 「結局チームが勝たないと、我々の言い訳に聞こえる。だけど、本当にそう思っている。打率が低くて得点するのが、指導者冥利だからね。でも負けているときには通用しない。取材などで聞かれたらずっと言っていた。本当はチーム打率が低くて得点して勝つのが一番うれしいって。みんながずっと打ってくれるんだったら、打撃コーチの仕事がないわけじゃないですか」

 ――2005年の優勝はタイトルホルダーがたくさんいた。今年はまた違う強さ
 「どうだろう、そうですねえ、今の近本から始まり大山、木浪、数字的にまだまだ伸び率はあるので、もっとわがままにやれば、うん…」

 ――完成されたチームと言われた05年のチームよりも…?
 「これはね、ボクより選手たちの意見の方が生じゃないかな。どう思っているかね。やっぱり初めて優勝するという選手が何を思っているか。選手たちの方がホットだと思うけどね」(=おわり)

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