横田慎太郎さんが遺した願いに、同期3人がプレーで応えた 岩貞、梅野、岩崎の思いは、空の向こうへ

2023年09月15日 07:00

野球

横田慎太郎さんが遺した願いに、同期3人がプレーで応えた 岩貞、梅野、岩崎の思いは、空の向こうへ
岩貞、梅野、岩崎の3人が同期の横田慎太郎さんに贈った直筆メッセージ Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神4ー3巨人 ( 2023年9月14日    甲子園 )】 今年7月18日、脳腫瘍のため28歳の若さで天国に旅立った元阪神タイガースの横田慎太郎さんには仲間へ残した“遺言”があった。「優勝してほしい。優勝が見たい」――。この世を去る2カ月前、病床で突然、そう口にした。7月25日の追悼試合でヒーローとなり、3人そろって活躍した同期入団の岩貞祐太投手(32)、梅野隆太郎捕手(32)、岩崎優投手(32)の亡き同僚への思いをスポニチが追った。(取材・構成=遠藤 礼)
 治療を終え療養期間に入った5月のある日、横田さんが突然その言葉を口にした。

 「絶対に優勝してほしい…優勝が見たいな。勝ってほしいな」

 隣にいた母・まなみさんは確かに聞いた。当時、まだ会話はできる状態でも闘病期間中も含めて野球に関わる話はあえて避け、本人も発していなかった。「びっくりしました。なんで今なんだろうって。何の前触れもなく慎太郎が言ったので覚えているんです」。

 当時、短くて1週間、長くて2週間と余命を宣告されていた。それでも約2カ月、懸命に生きた横田さんが仲間に残した最後の言葉。その“遺言”はチームが着実に優勝マジックを減らしていた9月上旬に同期入団の岩貞、梅野、岩崎にも伝わった。

 「ヨコにも見てほしかったけど、かなわないなら(優勝を)届けたい。もうここまで来たら(優勝は)義務だと思う」(岩貞)

 追悼試合として行われた7月25日の巨人戦(甲子園)で3人はそろって勝利に貢献した。試合前に、観戦した横田さんの両親とも対面。母・まなみさんが持参した笑顔の横田さんの写真を3人で触り、グラウンドに向かった。この時、梅野は心に決めていた。「第1打席のファーストストライクを振る。ヨコの積極性を思い出して」。2回、先頭で菅野の初球、ツーシームを仕留められず三ゴロも「初心に返れた」と振り返った。

 「ヨコの家族と会って一日、一日の練習、試合を全力でやらないといけない」と決意した岩貞は1点優勢の7回を零封し、9回は岩崎がマウンドに上がった。冷静沈着で心を乱さない左腕が「普段通りにいこうと思ったけど無理でした」と感情を必死に抑えながら試合を締めた。ゲームセットの瞬間、マウンド上で梅野が右手を天に突き上げると、岩崎も続いた。家族に思いのこもった勝利球を手渡した梅野は「号泣だった」と涙をこらえることができなかった。

 「自分たちは、一つ、一つの積み重ねだけどあの日の一勝も本当に大きいし。ヨコが一番見たかった瞬間を届けることができて良かった」(梅野)。

 「ヨコがいないっていうのを意識したのはあの追悼試合だけで。僕が一番知っているのは、元気なヨコ。亡くなったのはなしで、ヨコも頑張っているから、自分も頑張ろうという気持ち」(岩貞)

 「ありがとう。これからもずっとありがとう」(岩崎)

 横田慎太郎という野球選手、かけがえのない仲間は、3人の中に生き続ける。

 横田 慎太郎(よこた・しんたろう)1995年(平7)6月9日生まれ、鹿児島県出身。鹿児島実から13年ドラフト2位で阪神入り。3年目の16年開幕戦に「2番・中堅」で1軍初出場。17年2月に脳腫瘍が判明、同年オフに育成選手となり19年限りで引退。1軍通算38試合で打率・190、本塁打なし、4打点、4盗塁。引退後は自身の経験を伝える講演や執筆で活躍。23年7月18日、28歳で死去。現役時は1メートル87、94キロ。左投げ左打ち。

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