【虎番リポート】「チャンスは来る」――つながる糸原と北條の深い絆

2023年11月04日 05:15

野球

【虎番リポート】「チャンスは来る」――つながる糸原と北條の深い絆
22年の秋季練習で特守に汗を流す糸原(左)と北條 Photo By スポニチ
 日本シリーズを数日後に控えた10月下旬、糸原は戦力外通告を受けた北條の“お疲れさん会”を開いた。
 「ジョー、お疲れ」。谷川打撃投手、熊谷らとビールで乾杯しタイガースでの11年間をねぎらった。同じ内野手のライバルでもありながら、2人には絆のようなつながりがあった。

 「どっしりしとけや。チャンスは絶対来るから」。ちょうど1年前、糸原はそんな言葉を北條に掛けた。昨秋、岡田新監督のもと甲子園で始まった秋季練習中。同じ右打ちの内野手・渡辺諒が加入し「右打ちの内野手入ってきましたよ…」と危機感を抱く後輩の背中を強く叩いた。「俺もお前も“絶対チャンスは来る”と。その時、何か、糸さん格好いいなって思って」。

 チャンスは来る――。糸原もまた、その言葉を自身に言い聞かせながら一年を戦ってきた。昨年まで二、三塁のレギュラー格だったが、佐藤輝の三塁転向のあおりを受けた。開幕前の時点で指揮官は「左の代打は糸原」と明言。それでも、アマチュア時代から競争を身上とする30歳は、事あるごとに「チャンスは来る」と口にしてきた。

 それは願望でも楽観でもない。早出でのランニング、代打専念でも怠らなかった試合前の守備や走塁練習…。日々の準備に裏打ちされた確信でもあった。

 第4戦で7月以来の三塁守備に就き、第5戦では逆転劇につながる安打を放った背番号33の躍動。「シーズン中も守ってないのに“えっ”て思いましたよ。普通にゴロさばいて。甲子園の代打もめちゃくちゃ難しい。いきなり打席に入ったら照明がまぶしかったりするので」。北條は驚きつつも1年前の言葉を思い返していた。

 「あの人めちゃくちゃ強気やった。絶対に頼りにされる時は来るって。レギュラーじゃないと分かっていても強い気持ちがあった。お前も行けるって言われましたけど、僕はなかった(笑い)。でも、その言葉で僕は頑張れた」。現役続行を目指す北條は今もその背中から刺激をもらう。「さすが糸さん」――。はい上がろうとした者同士の絆が見えた。(遠藤 礼)

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