大動脈解離 一刻を争う危険な病気 予防法と対処法 いつもと違う腰の痛みを感じたら命に関わるサインかも

2024年03月01日 05:00

芸能

大動脈解離 一刻を争う危険な病気 予防法と対処法 いつもと違う腰の痛みを感じたら命に関わるサインかも
腰痛と大動脈解離について天野篤先生に教えていただきました Photo By スポニチ
 芸能界一、健康に詳しいアナウンサー生島ヒロシ(73)が、シニアに向けて元気に生きる方法を指南する連載「誰も教えてくれなかった“老いるショック”脱出術 オヤジの処方箋」。今回は「腰痛と大動脈解離の関係」について取り上げます。
 皆さん、こんにちは、生島ヒロシです。3月に入りました。でも春はまだ先、といった感じ。朝晩寒いですから、防寒対策はしっかりしていきましょう。今日は腰痛の話題なんですが、それは入り口。その腰の痛み、もしかしたら大動脈解離かもしれないんです。大動脈解離は命に関わる病気。順天堂大学医学部の心臓血管外科特任教授、天野篤先生に伺っていきます。
 天野先生、そもそも大動脈解離とはどういうものなんでしょう。
 「心臓から出る太い血管の大動脈は、内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。このうち、内膜から中膜にわたる内圧を受ける構造が破綻して血管が外膜1枚になり、破裂に至っていない状態が大動脈解離です。心臓に近い解離では発症から1時間ごとに致死率が1~2%上がり、24時間以内に死亡率が90%になるというデータもあります」

 怖いですね。腰痛とはどんな関係があるのでしょうか?

 「解離した位置によって、痛みが出る場所が違います。心臓に一番近い上行大動脈は胸、弓部大動脈か下行大動脈では背中、腹部大動脈なら腰です」

 大動脈解離は想像を絶する痛みと聞きますが、腰痛とは明らかに違うんですよね。

 「過去に経験したことのない激烈な痛み。腰痛やぎっくり腰のように、体を動かしたときに出る痛みではありません。じっとしていれば治まる痛みでもありません」

 尿管結石の痛みと比べられることもあるようですが。
 「尿管結石との区別は、皆さんでは難しいと思います。尿管結石は、拳大ぐらいの範囲の痛みで、錐(きり)で突かれるような疝痛(せんつう)です。大動脈解離は、胸、背中、腰全体が激しく痛みます」

 どんな人が大動脈解離になりやすいですか?

 「高血圧、高脂血症、動脈硬化、糖尿病の方は注意が必要です。中でも高血圧の方はリスクが高いです。高脂血症も血管の内膜の状態が不安定になるので気をつけてください。特に高齢者でも高血圧を長く放置した方は動脈硬化になりがちで大動脈瘤(りゅう)を含む血管病になる方が多いので要注意です」

 どのように予防すればいいんでしょうか。

 「何よりも、高血圧になりやすい状況をつくらないことです。これで大動脈解離は70%ぐらいは予防できます。加えて、動脈硬化になりやすい体質にならないこと。いずれも、コレステロール値の抑制、塩分に気を使う、糖尿病があればしっかりコントロール、交感神経と副交感神経のバランスを整えるための十分な睡眠などが大事になります」

 お風呂で熱いお湯に漬かるのもよくないと聞いたんですが。

 「体温の急激な変化はよくありません。寒い場所では血管が縮み、血圧が上がります。その状態で高い温度のお湯に入ると、熱いお湯を我慢しようとストレスがかかり、血圧はさらに上がることが考えられます。どんな場合でも“我慢する”という行為は、血圧を上げることにつながります」

 我慢することは、それ自体でストレスです。急激な温度変化といえば、このところ寒暖差が大きいですから、こちらも注意しないといけませんね。

 明らかに腰痛とは違う腰の痛みを感じたら、救急車を呼ぶべきですね。

 「大都市では大動脈解離の処置ができる病院へ、20分ほどで搬送できる態勢になっています。CT検査で腰痛の原因を探っていくことになりますが、大動脈解離は最後まで疑う項目。そうでないと分かって初めて、帰宅か、そのまま入院かなどを判断します」

 それは安心です。

 「大動脈解離は1分でも早い治療が必要なので、時間は非常に大事です。そのためにも普段から、病院、クリニックにかかることを嫌がらず、必要な治療は受けてください。適正な治療を受けていれば、急病の時、診断確定までの時間が短縮できるからです。例えば、高血圧で薬を飲み続けているということならば救急車の救急救命士は大動脈解離を疑うことができます。かかりつけ医の診察券、お薬手帳は、救急救命士や救命医に自分の病気を知らせる助けになります。かかりつけ医の診察券、お薬手帳は“命を守るパスポート”だと思ってください」

 お薬手帳は、ついつい軽視しがち。考えを改めないといけませんね。

 腰痛持ちの方は多いと思います。いつもと違う、こんな痛み経験ないぞ、となったら迷わずすぐに家族や周囲に伝えて、必要なら救急車。かかりつけ医の診察券とお薬手帳、できたら診察時の検査コピーはいつでも持ち出せるよう、分かりやすい場所に一緒に保管。大動脈解離は一刻を争う。肝に銘じておきましょう。

 ◇生島 ヒロシ(いくしま・ひろし)1950年(昭25)12月24日生まれ、宮城県出身の73歳。米カリフォルニア州立大ロングビーチ校ジャーナリズム科卒業後、76年にTBS入社。89年に退社し、生島企画室を設立。TBSラジオ「生島ヒロシのおはよう定食・一直線」(月~金曜前5・00)は、98年から続く長寿番組。健康に関する名物コーナーに登場する名医たちとの親交から、芸能界きっての健康通。75歳の現役医師・鎌田實さんとの共著「70歳からの“貯筋”習慣」(青春出版社)が販売中。

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