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【内田雅也の追球】消耗戦の“粘り負け” また当日移動…9連戦最後の地でチームも消耗していた

2023年06月10日 08:00

野球

【内田雅也の追球】消耗戦の“粘り負け” また当日移動…9連戦最後の地でチームも消耗していた
<日・神>2回、伏見(奥)に先制打を浴びた富田(撮影・岸 良祐) Photo By スポニチ
 【交流戦   阪神0―4日本ハム ( 2023年6月9日    エスコンF )】 「野球は消耗戦」と位置づけたのは映画にもなった『マネー・ボール』の主人公、アスレチックスGM、ビリー・ビーンだった。「アウトになっても、投手に5球以上投げさせた打席はプラスとみるべきだ」と査定評価に盛り込んだ。
 ならば、この夜の日本ハム先発9人のうち万波中正を除く8人がプラス評価を得たことになる。

 それほど阪神先発の新人左腕、富田蓮はそれだけ多く投げさせられた。降板した3回まで打者16人に80球を投げた。1人平均で5球とはいかにも多い。消耗に消耗を重ねたわけである。

 2回裏は松本剛、アリエル・マルティネスとともに6球目を連打。2死後、伏見寅威に3たび6球目を左前打され2点を失った。3回裏は2死一塁から松本に実に12球粘られ、結局四球。直後、マルティネスに初球を適時二塁打された。

 開幕当初は中継ぎ左腕だった富田だが、先発転向のため2軍調整を続けていた。ウエスタン・リーグで4試合、18回1/3を投げ、イニングを上回る19三振を奪っていた。ところが、2軍では決め球になっていたナックルカーブやチェンジアップ、フォークで空振りを奪えず、また見極められた。2ストライク後に3安打され、2四球を与えた。

 「何をしたいのか」と監督・岡田彰布は首をひねった。「三振を取りたいのか。そんな三振取るピッチャーちゃうやん。打たせて取るピッチャーなんやろ」。自分を見失っているとの指摘だ。課題が見つかった、苦い北海道での初先発だった。

 ただ、敗因の大部分を新人投手に負わせるのは酷である。打線は下手投げの軟投派、鈴木健矢に6回4安打無得点と、とらえきれなかった。

 消耗戦という点では阪神の各打者も粘りはしていた。6回23人中、5球以上投げさせた打者はのべ11人にのぼる。ところが、その11人中、安打したのは糸原健斗だけ、四球を得たのは中野拓夢だけだった。おかしな表現だが、根比べでの“粘り負け”の様相があった。

 仙台から北海道へ、当日移動の試合だった。新千歳空港からホテルで旅装を解く時間もなく、エスコンフィールドに直行した。何本もフェンス際あと少しの飛球がお辞儀して捕らえられたのは、疲労が原因だろう。6日も仙台へ当日移動で「スミ1」敗戦。この日は零敗。9連戦最後の地でチームも消耗していた。=敬称略=(編集委員)

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