“NPB前線夏予報”投高打低は続くでしょう 昨季から流れ変わらず…見えた3つの要因

2023年06月23日 06:30

野球

“NPB前線夏予報”投高打低は続くでしょう 昨季から流れ変わらず…見えた3つの要因
ロッテ・佐々木朗希 Photo By スポニチ
 プロ野球は今季も投高打低の様相を呈している。昨年はロッテ・佐々木朗希投手(21)の完全試合を含み、5人のノーヒッターが誕生。1940年以来82年ぶり2度目の最多タイ記録となった。今季もまた、楽天・滝中瞭太投手(28)が5月14日西武戦で9回1死まで無安打投球するなど“ノーノー未遂”が続出。現場の声を集めると、3つの要因が浮かび上がってきた。(プロ野球取材班)
 投高打低の傾向は、5度のノーヒットノーランが達成された昨季に続き、今季も色濃く映し出されている。5月14日には楽天・滝中が西武を相手に9回1死まで無安打投球。5回以上を無安打に封じた投手は22日時点で、すでに延べ14人に達する。現場の証言からは、3つの要因が浮かび上がってきた。

 オリックス・小谷野打撃コーチの「ここ5年、10年で単純に球速が上がっている。僕らの時代より格段に投手のレベルが上がっていて、その影響はあると思う」という言葉を裏付ける、興味深い数字がある。プロ野球分析データベース「翼」によれば、14年の時点で、セ、パ両リーグにおけるシーズン全体の打率は.261だった。それが、昨季は同.244まで低下。今季も交流戦終了時点で同.238と低調だ。14年当時、最速155キロを超えた投手はシーズンで14人で、平均球速が150キロを超えたのはわずか8人だった。それが昨季はロッテ・佐々木朗の164キロを筆頭に、実に52人が155キロ以上を計測。平均球速の150キロ超えも38人まで膨れ上がった。

 トラックマンなどの最新測定機器や映像解析は、各投手が取り入れている。1000分の1秒を撮影できる高速カメラを用いた投球動作の差異分析が進んだことで、好調時のフォームを熟知できるようになった。阪神・安藤投手コーチは言う。「良い時と現在のフォームを見比べ、どこに狂いが生じているか把握できるようになった。自分たちの時代は雲をつかむように修正していたことが、目で見て、頭で理解して取り組めるようになったのが大きい」。昨年6月18日西武戦でノーヒットノーランを達成したオリックス・山本もその一人。日頃から映像でボールの回転軸をチェックしたり、自分の感覚とスピードを照らし合わせる作業を怠ることはないという。これにより、年間を通じて安定したパフォーマンスを発揮することが可能に。従来なら投手陣が下降線に入っていた6月以降に、昨季は3人のノーヒッターが誕生した。

 ロッテ・井上の視点は、情報化が進む野球界の現状を冷静に分析した。「投手同士で“こうやるといいよ”みたいな情報を伝え合っていることで、全体的にレベルが上がってきているのでは。バッティングは技術だから…技術を伝えるのは難しい。“俺はこうしている”というのがあっても、それが相手にも合うかは別物なので」。今春のWBCでは、パドレスのダルビッシュがロッテ・佐々木朗や巨人・戸郷らにスライダーを直伝。投手陣全体が短期間での底上げに成功した一方、野手陣は相手チームの情報共有にとどまった。受け身である打者はタイミングの取り方一つにしても、個人の感覚に委ねられる部分が多い。井上の指摘は示唆に富む内容だった。

 ▼西武・平石ヘッドコーチ ピッチャーがいろいろな項目を数値化できるようになって、打者がどう感じているかを考えるようになった。投手の方には失礼ですが、スライダーがめちゃくちゃ曲がったとか、フォークが凄く落ちたとか、打者からすれば嫌じゃない。そういう投手が減って打者がどう感じているかを重視する投手が増えたと思います。

 ≪米では21年に打撃向上実験 投本間18.44メートルが変わるかも?≫打者受難の近年。21年には米独立リーグのアトランティック・リーグで投手のプレート板を30センチ後方に下げ、打撃向上にどの程度の効果をもたらすかを実験した。その後もメジャーリーグでは今季から一~三塁のベースのサイズが四方に3インチ(約7.6センチ)ずつ拡大されるなど、打者に有利に働くルール改正が進む。受け身である打者の苦戦がますます進めば、1893年に採用された投本間(18.44メートル)の見直しも含めた一大改革が断行される可能性も否定できない。

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