【内田雅也の追球】難しい「ピーキング」 不調に陥った阪神打線 CSまで、いかに心身ともに持っていくか

2023年09月26日 08:00

野球

【内田雅也の追球】難しい「ピーキング」 不調に陥った阪神打線 CSまで、いかに心身ともに持っていくか
<中・神>9回、佐藤輝は内野安打を放つ(撮影・須田 麻祐子) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神1―2中日 ( 2023年9月25日    バンテリンD )】 「ピーキング」という言葉がある。辞書に「試合当日に選手が最高の能力を発揮できるように、トレーニング方法を変えていくこと」とある。つまり、ピークの持って行き方である。
 陸上のトラック種目など100分の1秒単位で勝敗が決まる繊細な競技で特に重要とされる。体調や技術面以上に精神面の盛りあげ方もある。

 野球も繊細である。投手も打者も繊細だ。打線は水物とされ、好不調の波がある。そして、いつ不調の波に襲われるのか誰もわからない。

 阪神打線は名古屋に来て不調に陥った。23日に神宮で9点を奪った打線がバンテリンドームで24日は延長12回無得点。この夜もソロ本塁打の1点だけに抑えられた。

 「そんなの、すぐ打てんようになるよ」と敗戦後、監督・岡田彰布も吐き捨てるように言った。「何も言わんようになったら、好き放題打っとるな。一発で崩れるよ、はっきり言うて」。打撃は突然崩れるという繊細さを指摘する。

 もちろん、選手たちに慢心や油断があるわけではないだろう。ただ、早々と14日に優勝を決めて10日ほど。燃え尽きたわけではないが、大きな目標を成し遂げ、一時的に心に空虚さがあるかもしれない。

 大リーグの名フロントマンだったサンディ・アルダーソンが「いつだって一寸先は闇」と語っている。ロジャー・エンジェルの『球場へ行こう』(東京書籍)にある。

 「悲しい話だが、どの試合を最後に勝てなくなってしまうのか(中略)決してわからないというのが現実なんだ」。ではどうするか。「常に浮かれ過ぎず、落ち込み過ぎぬように、つまり平常心を保てということだ」

 岡田は「マイナス思考」で、7割以上失敗の打撃より9割以上成功の守備を重んじる。打てない時にどう得点を奪うかというテーマもある。

 ボテボテや強襲ゴロで疾走したヨハン・ミエセスや佐藤輝明の内野安打は値打ちがある。ともに俊足の代走を出した。結果は無得点だったが、得点機の形は作った。

 岡田は前回監督時代、日本シリーズ、クライマックスシリーズ(CS)で通算1勝8敗だった。9試合で零敗4度、総得点14点だった。貧打に泣いた苦い経験がある。

 10月18日のCSファイナルステージ開幕まで、いかに心身ともにピークを持っていくかが問われている。=敬称略=(編集委員)

おすすめテーマ

2023年09月26日のニュース

特集

野球のランキング

【楽天】オススメアイテム