【悼む】小澤征爾さん死去 華やかなステージの陰で寂しさと慎ましさ 重い楽譜抱え小型車自ら運転

2024年02月10日 04:30

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【悼む】小澤征爾さん死去 華やかなステージの陰で寂しさと慎ましさ 重い楽譜抱え小型車自ら運転
08年、文化勲章受章の喜びを語る小澤征爾さん Photo By スポニチ
 2005年6月、ウィーン国立歌劇場で小澤さんが指揮するオペラ公演を取材した。当時、小澤さんはクラシック音楽界の最高ポストの一つである同劇場音楽監督。加えて04~05シーズンは彼が同劇場の公演を最も多く指揮した年であり、キャリアの頂点の時期だった。公演は大成功、カーテンコールで万雷の喝采を浴びる小澤さんの姿がまぶしく感じられた。
 終演後、楽屋を訪ねると小澤さんは下着だけの半裸で座っていた。華やかな姿との落差に驚き、「マエストロどうなさったんですか?」と尋ねると「俺、いつも楽屋で浴衣を着ているんだけど今日持ってくるのを忘れちゃってさあ、一人暮らしは大変だよね」と苦笑い。「明日、音楽監督室においでよ」と誘ってくれたので取材も兼ねて伺った。

 食事は一人でハウスキーパーの作り置きを温めて食べていることなどを明かし「家族も忙しいから、娘以外はなかなかこちらに来ることができないんだよね」とポツリ。息子の征悦が出演するドラマのビデオや大リーグのボストン・レッドソックスの試合を衛星中継で見ることを楽しみにしていると語っていた。

 取材後、小澤さんはシーズンの担当公演が終了したのでオペラの指揮者用スコア(総譜)数冊を自宅に持って帰るために車に運ぶという。指揮者用スコアは電話帳のように厚く、電話帳より大きく重い。それを劇場職員でなく自分で運ぶという。この時は70歳を迎える少し前。「私がお手伝いします」と、記者がスコアを抱えて駐車場まで運んだ。小澤さんの車は小型ファミリーカー。飾らない人柄の小澤さんらしいが、小型車を自分で運転していることにも驚いた。

 小澤さんは「楽譜を運んでもらったお礼に劇場のバックステージツアーをしてあげるよ」と自ら案内してくれた。普通は入れないエリアを見せてもらい、最後はステージに出た。

 そこでは別の指揮者が先の公演のリハーサル中。突然の音楽監督登場にリハはストップ。音楽ファンなら誰もが知る有名歌手たちが「セイジ、どうしたの?」と小澤さんの周りに集まり、にぎやかな人の輪ができ、彼はその中心で輝いていた。その姿はまさに世界のオザワであった。(元文化社会部長・宮嶋 極)

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