【悼む】小澤征爾さん死去 華やかなステージの陰で寂しさと慎ましさ 重い楽譜抱え小型車自ら運転
2024年02月10日 04:30
芸能
食事は一人でハウスキーパーの作り置きを温めて食べていることなどを明かし「家族も忙しいから、娘以外はなかなかこちらに来ることができないんだよね」とポツリ。息子の征悦が出演するドラマのビデオや大リーグのボストン・レッドソックスの試合を衛星中継で見ることを楽しみにしていると語っていた。
取材後、小澤さんはシーズンの担当公演が終了したのでオペラの指揮者用スコア(総譜)数冊を自宅に持って帰るために車に運ぶという。指揮者用スコアは電話帳のように厚く、電話帳より大きく重い。それを劇場職員でなく自分で運ぶという。この時は70歳を迎える少し前。「私がお手伝いします」と、記者がスコアを抱えて駐車場まで運んだ。小澤さんの車は小型ファミリーカー。飾らない人柄の小澤さんらしいが、小型車を自分で運転していることにも驚いた。
小澤さんは「楽譜を運んでもらったお礼に劇場のバックステージツアーをしてあげるよ」と自ら案内してくれた。普通は入れないエリアを見せてもらい、最後はステージに出た。
そこでは別の指揮者が先の公演のリハーサル中。突然の音楽監督登場にリハはストップ。音楽ファンなら誰もが知る有名歌手たちが「セイジ、どうしたの?」と小澤さんの周りに集まり、にぎやかな人の輪ができ、彼はその中心で輝いていた。その姿はまさに世界のオザワであった。(元文化社会部長・宮嶋 極)