プロ初アーチの阪神・森下 開幕後に極度の打撃不振 不安の中変えた15グラムで球団初の快挙達成

2023年07月10日 07:00

野球

プロ初アーチの阪神・森下 開幕後に極度の打撃不振 不安の中変えた15グラムで球団初の快挙達成
<神・ヤ> 初本塁打のボールを手に笑顔の森下(撮影・大森 寛明) Photo By スポニチ
 【セ・リーグ   阪神1-0ヤクルト ( 2023年7月9日    甲子園 )】 阪神・森下翔太外野手(22)が9日、ヤクルト戦で待望のプロ初本塁打を放った。0―0の8回無死からの第4打席に左中間へ先制1号。プロ96打席目で飛び出した一撃はチームの連敗を2で止める決勝弾となった。1―0決勝本塁打は、69年の田淵幸一以来54年ぶり2人目だが、初本塁打では球団史上初。2戦連続「1番」起用に応えたドラフト1位新人が、11日からのDeNAとの首位攻防戦へ弾みをつけた。
 スタンドインを確認すると、森下は小さく右拳を握りしめた。「歓声は聞こえたんですけど、それどころじゃなかったです。ホッとじゃないけど、やってやったぞ!というのがありました」。猛虎の未来を担う、大砲候補がもがき、苦しみ抜いて放った記念すべき初の放物線だった。

 「絶対に出塁したいなと思っていた」

 0―0で迎えた8回無死からの第4打席だった。3番手の木沢が投じた初球。150キロの直球を振り抜いた打球は左中間スタンドに飛び込んだ。出場30試合目、96打席目で生まれたプロ1号。5回の第3打席から「バットも短く持った」とコンパクトに振り抜く意識が奏功。4万人を超える大観衆が見守る甲子園で初めてダイヤモンドを一周した。

 チームに希望の光を照らした黄金ルーキーは性格も明るい。チーム内ではいじられキャラで、試合前の円陣でも頻繁に声を張り上げる大卒1年目。今年のオープン戦では3本塁を放つなど、誰もがシーズンでの活躍を思い描いた。ただ、開幕後に苦境を経験。極度の打撃不振にあえぎ、もがいていた。

 「1軍の投手の速球に振り負けることが多かったので、変えました」

 試行錯誤の末に勇気ある行動に出た。2度目の抹消となった6月9日以降の2軍調整中にバットの重さを15グラム増の880グラムに変更。1軍では捉えたはずの打球がファウルに…。また弱点が露呈すれば、徹底的に攻められる。当然ながら成績も下降。それでも最後は自らを信じた。「1軍の壁」の打破へ向けてたどり着いた先が、わずか15グラムの世界だった。その結果が、この夜の150キロ直球を一振りで仕留めたことにつながった。

 ただ、これだけで満足はしない。前夜8日の一戦では初めて「1番・中堅」でスタメン出場し、4打数無安打。試合後には岡田監督から「俺は、(結果が出なくても)我慢してるんやで」と奮起を促された。

 当然、指揮官のメッセージの意図を本人も理解している。死球はリーグ最多の7個。体を張って勝利に貢献する覚悟もある。「これをいいきっかけにしてやっていきたい」。チームにとっても大きな一本となった7月9日。ただ、森下はもう次の一本を見据えている。 (石崎 祥平)

【データ】
 ○…森下(神)が0―0の8回、木沢からプロ初本塁打。2度目の勝利打点を記録。阪神新人の初本塁打が勝利打点は、17年7月1日のヤクルト戦、大山の3ラン以来6年ぶり。1―0決勝本塁打は、69年5月21日広島戦、田淵幸一の8号以来54年ぶり2人目だが、初本塁打では球団史上初めてとなった。なお、他球団では88年5月28日広島戦で勝呂博憲(巨)、92年9月23日近鉄戦で田口壮(オ)がマークしている。

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