上溝南・関高佑、逆転呼んだ「代打オレ」 白血病と特発性大腿骨頭壊死症を克服、家族に感謝の中前打

2023年07月10日 05:00

野球

上溝南・関高佑、逆転呼んだ「代打オレ」 白血病と特発性大腿骨頭壊死症を克服、家族に感謝の中前打
<上溝南・厚木西>7回、代打で登場し中前打を放った上溝南の関高(撮影・村井 樹) Photo By スポニチ
 【第105回全国高校野球選手権神奈川大会1回戦   上溝南10―3厚木西 ( 2023年7月9日    中栄信金スタジアム秦野 )】 第105回全国高校野球選手権(8月6日開幕、甲子園)の出場校を決める地方大会は9日、28大会で継続試合2試合を含む218試合が行われた。神奈川大会では上溝南が厚木西に10―3で快勝。白血病や特発性大腿骨頭壊死(えし)症を乗り越えてグラウンドに戻った関高佑(こうすけ)内野手(3年)が、1点を追う7回に代打で公式戦初安打となる中前打を放って逆転勝利に貢献した。
 野球の神様がほほ笑んだ。上溝南が1点を追う7回1死一塁。代打の関高が打席に立つと一塁応援席から響いてきたのは「学園天国」だった。歌詞にある♪運命の女神さまよ、この僕にほほ笑んで、と声援が飛んだ瞬間だ。初球をフルスイング。打球が鮮やかに中前へ抜けると、さらに大きな歓声が湧き起こった。

 勢いづいた打線は一挙8点を奪って逆転コールド勝ち。流れを呼び込んだ背番号20は「支えてくれた家族にヒットをプレゼントできて良かった。“打ってやったぞ”と言いたいです」と満面の笑み。続けて「夢だったこの場所に、やっと立てた…」と感慨を込めた。

 突然の出来事だった。高校入試を控えた中学3年の11月。体調不良が続き検査を受けると結果は白血病。それでも「高校野球をやりたい」という強い意志で入院生活に耐え、上溝南に入学した。1年の8月に退院。だが悲劇は続く。翌月に難病の特発性大腿骨頭壊死症を発症。昨年12月に手術を終えるまでは松葉づえでの生活が続いたが「必ず治ると信じていた」と振り返る。

 本格的に練習に参加できたのは今年2月。現在も体力的な問題で試合では守備に就けないが、練習から献身的に声を出す姿が仲間の信頼を集め、浅井彬宏監督に選手交代を進言する役割を担う。この日も“ヘッドコーチ”として勝負どころを見極め、7回に「監督、自分が行きます」と“代打、俺”を宣言。一振りで結果を残した。スタンドで観戦していた家族は号泣。母・奈穂子さん(47)は「打席に立った瞬間から涙が止まらなかった。本当に、本当に、よく打った」と喜んだ。

 次戦の相手は夏3連覇を目指す強豪の横浜。格上だが、失うものはない。「こんなに楽しい高校野球を、まだ終わらせたくない」と関高。病魔を克服した、その存在がチームに勇気を与えている。(村井 樹)

 ◇関 高佑(せき・こうすけ)2005年(平17)12月5日生まれ、神奈川県出身の17歳。淵野辺小2年から野球を始め、大野北中時代は相模原南シニアに所属。中学3年時に発症した白血病などを乗り越え、上溝南では3年春に初めて公式戦出場。好きな選手はDeNAでも活躍した筒香嘉智。1メートル72、95キロ。右投げ右打ち。

 ▽白血病 血液中の白血球が異常に増加し、白血病細胞と呼ばれるがん細胞がつくられ、血液や骨髄の中に増える病気。「血液のがん」とも呼ばれる。

 ▽特発性大腿骨頭壊死症 大腿骨の一部に血液が行き渡らなくなり、壊死してしまう病気。症状としては壊死した部分が骨折したり、股関節に痛みが出たりする。

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